2018年06月03日

五月ばかりなどに

5月だから五月ネタでちょうどいいな!と思いながら描いているうちに6月になってしまいました。リクエストにお応えします。
〈本文〉
 五月ばかりなどに山里にありく、いとをかし。草葉も水もいとあをく見えわたりたるに、上(うへ)は釣れなくて草生ひ茂りたるを、ながながとただざまに行けば、下はえならざりける水の、ふかくはあらねど、人などのあゆむにはしりあがりたる、いとをかし。
 左右にある垣にある、ものの枝などの、車の屋形などに、さし入るを、いそぎてとらへて折らんとするほどに、ふと過ぎてはづれたるこそ、いとくちをしけれ。
 蓬(よもぎ)の車に押しひしがれたりけるが、輪の廻りたるに、近ううちかかりたるもをかし。
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〈juppo〉でも、ここでの五月(さつき)は旧暦ですから、今の暦ではこれからの季節なんですよね。春を過ぎて暖かくなり、野山も明るさを増してくる季節です。お出かけには最適です。梅雨にも入っているころですから、晴れ間を見て出かけたのでしょうね。

 景色が主な話題なので、久しぶりに塗り絵でお送りしています。

 「山里をありく」と始まっていますが、「ありく」は「歩く」ではないんですね。牛車に乗ってるんです。気ままにうろついている様を表す語のようです。「あゆむ」だったら「歩く」の意味なんですって。「散策」では結局歩くという意味になっちゃうんですけど、他に言葉が思いつかず、こうしました。

 「上はつれなくて」下に水がある状態てのがどういうのかよくわからなかったんですけど、自然の地形にある水場で池や川とはまた違うのかな、「えならざりける水」ということはそれでも相当情緒がある景色なのかな、うーん、やっぱりよくわからない・・な結論で描いたのがコレです。

 それとおそらく、清少納言さんは他の女官の方々とも連れ立ってお出かけしているような気もするんですけど、台詞的に他に女性の登場人物がいないのを良いことに、ひとり(プラス従者の方たち)でお出かけしたように描いちゃいました。ここには描いてないけど、前後に他の牛車もいるのかも〜、なんて想像で読んでいただいても良いかと思います。

 「蓬の車に押しひしがれたりけるが」てのはアレですね、おなじみの「同格の『の』」ですね。
漫画ではそういうふうに訳していませんが、「蓬で、車に押しつぶされたのが」というように訳します。でもそう訳すとちょっとしつこい感じですよね。
 道々車輪に踏まれて潰れたよもぎが、そのまま車輪にくっついて、車輪が回って上の方にくるたびに香りがしてくるということなんですね。のどかですね〜。

 今日、6月3日は日曜日で、すごくいいお天気ですが、暑くてとても野山に出かけようなどとは思えない日和です。平安時代にはそんなに暑くなかったんでしょうね。暑い時もあったんでしょうけど。牛車の中なら熱中症にはならないのかもしれませんが、現代人の感覚では水をこまめに飲んで!とアドバイスしたくなるお話です。
 千年前の気候に思いを馳せた誕生日でした。
posted by juppo at 15:48| Comment(2) | 枕草子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年05月07日

袴垂、保昌にあふことA

後編です!ゴールデンウィーク中に前・後編をお届けできて良かったです!連休はそんな感じで終わりました!
〈本文〉
走りかかりたる時に、そのたび笛を吹きやみて、立帰りて、「こは、なにものぞ。」ととふに、心もうせて、我にもあらで、ついゐられぬ。また「いかなる者ぞ。」ととへば、今は、にぐとも、よもにがさじと覚えければ、「ひはぎにさぶらふ。」といへば、「何ものぞ。」ととへば、「あざな袴垂(はかまだれ)となんいはれさぶらふ。」と答ふれば、「さいふ者ありときくぞ。あやふげに、稀有(けう)のやつかな。」といひて、「ともにまうでこ。」とばかりいひかけて、またおなじやうに笛吹きてゆく。この人のけしき、今はにぐともよもにがさじと覚えければ、鬼に神とられたるやうにて、ともに行程(いくほど)に、家に行きつきぬ。いづこぞと思へば、攝津前司保昌(せっつぜんじやすまさ)といふ人なりけり。家のうちによび入れて、綿あつき衣一(ひとつ)を給はりて、「きぬの用あらん時は、まゐりて申せ。心もしらざらん人にとりかかりて、汝あやまちすな。」とありしこそ、あさましくむくつけくおそろしかりしか。いみじかりし人のありさまなりと、とらへられてのち、かたりける。
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〈juppo〉前回の記事を投稿した際、大事なことを書こうと思っていて忘れていました。町田市とその近隣にお住いの皆さんにお知らせです。
小田急線町田駅前にある、久美堂本店さんに私の本「高校古文こういう話」と「高校古文もっとこういう話」を置いていただけることになりました。

http://www.hisamido.co.jp/index.html

「どこで売ってるの?」と今までさんざん聞かれましたが、やっと適切な返答ができるようになりました。久美堂さん、ありがとうございます!

 さて、満を持して強奪行為の実践に繰り出した袴垂ですが、結果的に襲えなかったと思ったら結果的に目的のものは手に入れ、結果的に結局その後は捕まってるんですね。
 保昌に説得されて、その後無用な犯罪はしなくなったとかいうオチではないところが妙に現実的ですよね。その後も懲りずに罪を犯し続けたのか、それまでにしていた罪を問われたのか、はこのお話からはわからないですけど。
 そもそもが盗賊というキャラですから、そういう人がのうのうと世間を大手を振って生き延びることは出来ないのだ、という戒めも含んだ話なんでしょうか。
 
 「鬼に神とられたる」の「鬼に神」は「鬼神」としている文もあるそうで、それだと鬼神に捕われたようになったということなので、鬼神とかいうクリーチャーを想像しなければならないところでした。助かりました。どっちにしても、鬼も神も今回絵にしていませんが。
posted by juppo at 01:39| Comment(0) | 宇治拾遺物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年04月30日

袴垂、保昌にあふこと@

新学期を迎えた皆さんこんにちは!ゴールデンウィークですね!!
リクエストにお応えします。
〈本文〉 
 昔、袴垂(はかまだれ)とていみじき盗人の大将軍ありけり。十月ばかりにきぬの用ありければ、衣(きぬ)すこしまうけんとて、さるべき所々うかがひありきケルに、夜中ばかりに、人みなしづまりはててのち、月の朧(おぼろ)なるに、きぬあまたきたりけるぬしの、指貫(さしぬき)のそばはさみて、きぬの狩衣(かりぎぬ)めきたるきて、ただひとり笛吹きて、ゆきもやらず、ねりゆけば、「あはれ、これこそ、我にきぬえさせんとて、出でたる人なめれ」と思ひて、走りかかりて衣をはがんと思ふに、あやしく物のおそろしく覚えければ、そひて二、三町ばかりいけども、我に人こそ付きたれと思ひたるけしきもなし。いよいよ笛を吹きていけば、心みんと思ひて、足をたかくして走りよりたるに、笛を吹きながら見かへりたる気しき、取りかかるべくもおぼえざりければ走りのきぬ。かやうにあまたたび、とざまかうざまにするに、露ばかりもさわぎたるけしきなし。「稀有(けう)の人かな」と思ひて、十餘(よ)町ばかりぐして行く。「さりとてあらんやは」と思ひて、刀をぬきて
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〈juppo〉久しぶりに宇治拾遺物語です。今回はネットでテキストを探すことなく、手元にあった角川文庫ソフィア『宇治拾遺物語』を参考にしました。


これです。訳は載っていませんが、なんとなくで読めます。今回は漫画にするのでいろいろ調べて訳しましたが。

 袴垂という盗賊は、「袴垂保輔」とされることもあるそうですが、文庫の注釈には「別人」だとあります。保輔はここに登場する保昌の弟だそうです。保昌はまだ名乗られてないですね。でもタイトルにあるので、当然この笛を吹いてる人が保昌ですよね。

 「指貫のそば」を「指貫の股立」と訳してありますが、「股立って何さ」と思いながら訳してました。袴に詳しい人なら現代でも常識な言葉なのかもしれません。袴の腰の、脇のすき間が空いた部分のことなんですね。そこを帯に挟んで裾を上げているということらしいです。なぜそんなことをしているのかは、ナゾです。多分歩きやすくするためでしょう。夜道なので。
 夜道を笛を吹きながら歩いている理由もナゾなんですよね。風流な人はただ帰宅するのにも楽器を奏でながら歩いたんでしょうか。今でいう鼻歌くらいな感じで。

 そうやってゆるゆる歩いているだけなのに、襲おうとしても襲えない、身にまとう物のおそろしさがあるというんですね。その、おいそれと手が出せない雰囲気が漫画に描ききれているとは到底思えないのですが、とてもそう思えないのに手が出せない恐ろしさ、なんてものがあるのだろうなと思ってください。

 とは言え、このままただついて行くだけでは、と意を決した袴垂であります。続きます。


 そんなわけでゴールデンウィークに突入しましたね。最近、平日が人並みに忙しいので、休みになったらあれこれしようと思いつつ、休みになると何にもしたくない症状に陥りそうです。夕方の「カーネーション」の再放送を見ているうちに、沸々とミシン踏みたい気持ちにもなってくるのですけど。
posted by juppo at 01:11| Comment(0) | 宇治拾遺物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年04月08日

宮にはじめてまゐりたるころH

最終回です!!ああ〜、長かったですねぇ〜。
〈本文〉
とあるに、めでたくもくちをしうも思ひみだるるにも、なほ昨夜(よべ)の人ぞねたくにくままほしき。「『うすさ濃さそれにもよらぬはなゆゑに憂き身のほどを見るぞわびしき』なほこればかり啓し直させ給へ。式の神もおのづから。いとかしこし」とて、まゐらせてのちにも。うたてをりしも、などてさはたありけんと、いとなげかし。
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〈juppo〉最後の2回分は、8コマで1回分にまとめられるかな、と思ったら長いので2回に分けたのですが、残った分がまた微妙な長さで、4コマにしても良かったのですけど何とか薄めて伸ばして6コマにしました。最初のコマなんて大分薄まってますよね。結構その回ごとに、行き当たりばったりで描いています。
 6コマにした結果、6通りの瀬少納言さんのリアクションをお楽しみいただくだけの回になった感じです。

 前回に引き続き、くしゃみ犯を恨み続ける清少納言さんです。くしゃみなんて生理現象ですから、タイミングが悪かったとしても当人のせいではないのに、自分の立場でしか物を考えられないレベルに恨んでますよね。こんな失態は「サザエさん」だったら山ほど出てくると思いますが、この時の清少納言さんにとっては生涯の汚点だくらいの嘆きなんですね。若さなんですかねー。

 今年の花粉症はいつもより重めで、私もまだくしゃみに苦しめられています。それに今年はいつもより目が痒いです。ということは、杉よりヒノキに反応しているのでしょうか。花粉症との付き合いが長いわりにちゃんとした診断を受けたことがないので、毎年正確に何の花粉症なのか自分ではわかってないんですよね。ただ鼻をかんでいます。

 そして先日、ついに「ペリーヌ物語」を全話見終えました。感動しました。感動で余計鼻をかむ羽目になった今年の春でした。
 ひとりでくじけず生きてきたペリーヌも偉いのですけど、何と言ってもビルフラン様お抱えのフィリップ弁護士が有能すぎです。弁護士なのに後半は探偵と化しています。見たところそうお若くもないのに、単身インドに行かされたりヨーロッパ中を調べ歩かされたりしていたかと思うと、感動を超えて心配になってくる終盤でした。無事にペリーヌの身の上が明かされて、フィリップ弁護士も重責を解かれて本当に良かったです。おそらく本放送の時はこんな心配はせずに見てたんですよね。失礼いたしました、フィリップ弁護士。

 鶴ひろみさん追悼の気持ちで見始めた「ペリーヌ物語」でしたが、ちょうど見終わったところで高畑勲氏の訃報のニュースに触れました。高畑さんはペリーヌには携わっていらっしゃらないようですが、その後番組だった「赤毛のアン」で脚本・演出担当だったんですね。せっかくなので続けて「アン」を見ようかなぁ、と考えています。
posted by juppo at 22:32| Comment(2) | 枕草子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月29日

宮にはじめてまゐりたるころG

ぼちぼちやってたらやっぱりこんなペースに。続きです。
〈本文〉
ものなど仰せられて、「我をば思ふや」と問はせ給ふ、御いらへに、「いかがは」と啓するにあはせて。台盤(だいばん)所のかたに、はなをいと高うひたれば、「あな、心憂。そら言(ごと)をいふなりけり。よし、よし」とて、奥へ入らせ給ひぬ。いかでかそら言にはあらん。よろしうだに思ひきこえさすべきことかは。あさましう、はなこそそら言はしけれ、と思ふ。さても誰か、かくにくきわざはしつらむ、おほかた心づきなしとおぼゆれば、さるをりもおしひつぎつつあるものを、まいていみじ、にくしと思へど、まだうひうひしければ、ともかくもえ啓しかへさで、明けぬればおりたる、すなはち、浅緑なる薄様(うすやう)にえんなる文を、「これ」とて来たる、あけて見れば、
 「『いかにしていかに知らましいつはりを空にただすの神なかりせば』となん御けしきは」
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〈juppo〉あと少しで終わるのですが、8コマにはちょっと長いので2回に分けます。そういうわけで、次回がいよいよ最終回です。
 今回、漫画はだいぶ前に描いてたんですが、生活に追われてPCを3週間も開かない日々でした。3月が31日まであってよかったです。

 前回までは伊周さんらにからかわれていた清少納言さん、今回は中宮様と夫婦のような会話をしていますね。「我をば思ふや」は「私のこと愛してる?」と訳しても良いみたいですよ。唐突な告白ですよね。
 ここで大きなくしゃみをしたのは、台盤所という女房たちの控え室にいるらしい誰かです。当時、くしゃみは不吉なものだとされてた話は「にくきもの」でも出てきましたが、ここでは会話の途中で第三者が咳払いをして嘘を指摘するような役割を果たしてしまった、ということのようです。
 現代では不吉というより、くしゃみをすると誰かが噂をしていると解釈したりしますよね。私が子どもの頃は「一褒められて、二憎まれて、三惚れられて、四(よ)風邪ひく」なんて言われてましたよ。今でも言いますか?
 くしゃみの回数で噂の種類が決まるということなんですが、花粉症が猛威を奮っている今、回数を数えるどころではないですね。まだ花粉症になっていない方は、早くなってください。毎年そう呪いながら鼻をかんでいます。

 タイミングよく(悪く?)くしゃみをした当人を清少納言さんも呪いつつ、退室したところに中宮様からのお手紙が来たと。
 「ただすの神」は京都の下賀茂にあるとかの糺ノ森(ただすのもり)とかにいる神様だそうです。地元では有名な森と神様ですか?
 中宮様の詠んだ歌を聞き書きした女房からの手紙なので、伝聞の形で書かれています。

 最終回は近いうちに!
 今月中に!とは断言しません。

 
 あ、ペリーヌはトロッコ押しから猛スピードで出世して今お屋敷住まいの秘書です。そこからがまだまだあるんですね。工場の後継を狙うビルフランの甥と工場長の会話が、ほとんどお代官様と越後屋です。

 
posted by juppo at 01:07| Comment(0) | 枕草子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする