2017年12月31日

宮にはじめてまゐりたるころB

年の瀬です。言うまでもなく、今年最後の更新です。
〈本文〉
昼つ方、「今日はなほまゐれ。雪に曇りて顕(あら)はにもあるまじ。」など、たびたび召せば、この局(つぼね)の主(あるじ)も、「見苦し。さのみやは籠(こも)りたらむとする。あへなきまで御前許されたるは、さおぼしめすやうこそあらめ。思ふに違(たが)ふはにくきものぞ。」と、ただいそがしに出だし立つれば、我(あれ)にもあらぬ心地すれど、まゐるぞいと苦しき。火焼屋(ひたきや)の上に降り積みたるも、めづらしうをかし。御前近くは、例の炭櫃(すびつ)に火こちたくおこして、それにはわざと人もゐず。上臈(じやうらふ)御まかなひに候ひたまひけるままに、近うゐたまへり。沈(ぢん)の御火桶(ひおけ)の梨絵したるにおはします。次の間に、長炭櫃(ながすびつ)に、隙(ひま)なくゐたる人々、唐衣(からぎぬ)こき垂れたるほどなど、馴(な)れ安らかなるを見るもいとうらやまし。御文(ふみ)取り次ぎ、立ちゐ、行き違ふさまなどの、つつましげならず、物言ひゑ笑ふ。
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〈juppo〉2017年も終わりですね。皆さんも一年の終わりにはその年を振り返ってみたりすることと思いますが、どんな一年でしたか。
私の一年は、夏バテしていたにしては全体的に健康で過ごせた一年でした。おかげさまで、当ブログが2冊目の書籍になった年でもありました。

 この「宮にはじめてまゐりたるころ」のBとCは、実はその書籍用に描き下ろしたものです。描いたのは夏バテしてたころですが、出版を待ってブログの方でも発表することにしました。

 @Aを描いたのがずいぶん前なので、どんな話だったかなぁ、という感じですよね。
宮仕えに慣れてない清少納言さんが、中宮さまのいとやんごとないきらびやかさにビビりまくり、な話でした。続きもそんな話です。
 自分の姿を見られるのが恥ずかしいほどなので、夜だけお勤めに上がりたいのに、中宮さま直々に昼から来いとのリクエストを寄せて来られて、シブシブ昼から出勤する今回の清少納言さんです。
 苦しいほど気後れして出かけているのに、火焼屋に積もった雪を「めづらしうをかし」としみじみ見る余裕があるんですね。さすがですね。

 前述の通りCまで描きおろしたので、続きも間をおかずお届けできると思います。来年までお待ちいただきますが。


 昨年出版した1冊目の方も、先ごろ重版になったそうです。「‥そうです」とヒトゴトなコメントでスミマセン。売れてるのかどうか、実際私には手応えとか実感とかないんです。でもお金を出して買ってくださった皆さんのおかげで重版に至ったのですから、手応えはなくても感謝しておりますよ。本当にありがとうございます。なんだか申し訳ないくらいに思っています。
 こんな私ですが、来年もブログ第一で頑張ります。

 皆さんにとって来る年が、嬉しい一年になりますように。
posted by juppo at 22:07| Comment(0) | 枕草子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月10日

顕雅の言ひ間違ひ

師走ですね。久しぶりに『十訓抄』から短いのをひとつ。
〈本文〉
 楊梅大納言顕雅(やまももだいなごんあきまさ)卿は、若くよりいみじき言失(げんしち)をぞし給ひける。神無月(かみなづき)のころ、ある宮ばらに参(まゐ)りて、御簾(みす)の外にて女房たちと物語りせられけるに、時雨(しぐれ)のさとしければ、供(とも)なる雑色(ざふしき)を呼びて、車の降るに、時雨さし入れよとのたまひけるを、車軸(しやじく)とかや、恐ろしやとて、御簾の内笑ひあはれけり。ある女房の、かやうなる御言ひ違(たが)への常にありと聞こゆれば、げにや、御祈りのあるぞやと言はれければ、そのために三尺の鼠(ねずみ)を作りて、供養(くやう)せむと思ひ侍ると言はれたりける、をりふし、鼠の、御簾の際(きは)を走り通りけるを見て、観音(くわんおん)に思ひまがへてのたまひけるなり。時雨さし入れよにはまさりてをかしかりけり。
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〈juppo〉「やまもも大納言」て何か可愛いなぁ、と思いませんか。これは呼び名で本名は源顕雅(みなもとのあきまさ)という方だそうです。1074年〜1136年に実在してるんですね。そういう方が、千年後の現在にまで語り継がれるのに言い間違いの多い人だった、という評判はどうかと思いますが、調べると「詩、管弦の才がなかった」と伝わってるとか、いいとこ無しの御仁だった模様です。残念です。
 
 伝わる短所が「言い間違い」というのも、ちょっと可愛いですけどね。あきる野市を「あひるの市」とかね。

 マンガの1コマ目に原文とは関係なく書いた言い間違いの例は、50代以上の人にしか分からないネタになっています。すみません。何のことやらどうしても気になる若い方は、検索してください。

 時雨と車を言い間違えたのに、宮様らは「車軸が」と受けていますが、昔は大雨のことを「車軸を流す」とか「車軸のごとし」とか言ったのだそうです。車の軸くらい太い雨が降っている様子を言い表したのですね。ただ言い間違えただけでなく、さっと降っているだけの雨なのに大雨かよ!と突っこんでいるようです。

 ネズミを見ながら話していたので、というような言い間違いも、よくありますよね。
 
 昔、居酒屋で飲んでいた時におつまみの注文を私がまとめてすることになって「焼き鳥と、揚げだし豆腐と、・・・」などと順に言っていた最後に、「・・・それと、えーと、ラスプーチン!」と自信たっぷりに言ってしまってから、店員さんのきょとんとした顔にハッとして「あ!じゃなくて!ランプータン!」と言い直したことがありました。ランプータンて珍しい果物があったので注文したんですけど、同席していた一人から「ラスプーチンて、ロシアの怪僧だろ」と指摘されたというオチでした。

 ことほど左様に、言い間違いはネタとして聞き手に面白がってもらえる幸せな欠点と言えますよね。

 今回の作品はリクエストに関係なく描きました。このところ「平家」「枕」「漢文」のループになっている気がして、ちょっと目先を変えようかと古い問題集から拾ってきました。
posted by juppo at 05:51| Comment(0) | 十訓抄 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする