2018年10月28日

須磨の秋A

お待たせしました!続きです。
〈本文〉
げにいかに思ふらむ、わが身ひとつにより、親はらから、片時たち離れがたく、ほどにつけつつ思ふらむ家を別れて、かくまどひあへる、とおぼすにいみじくて、いとかく思ひしづむさまを心ぼそしと思ふらむとおぼせば、昼は何くれとうちの給ひまぎらはし、つれづれなるままに、いろいろの紙を継ぎつつ手習ひをしたまひ、めづらしきさまなる唐(から)の綾(あや)などにさまざまの絵(ゑ)どもをかきすさび給へる屏風(びやうぶ)の面(おもて)どもなど、いとめでたく見所あり。人々の語りきこえし海山のありさまを、はるかにおぼしやりしを、御目に近くては、げにをよばぬ磯のたたずまひ、二(に)なくかき集め給へり。「このごろの上手(じやうず)にすめる千枝(ちえだ)、常則(つねのり)などを召してつくり絵仕(つか)うまつらせばや」と心もとながりあへり。なつかしうめでたき御さまに、世のもの思ひ忘れて、近う馴れ仕うまつうるをうれしきことにて、四五人ばかりぞつとさぶらひける。
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〈juppo〉前回から何やら悩んでいる光源氏でしたが、今回も冒頭から悩んでいます。自分に仕えてくれている人たちの心情にまでシンクロして思い悩んでいます。さらに、自分がいじいじ悩んでいると周りの人が気を遣うのではと悩んでいるようです。いい人ですね、光源氏。モテるだけのことはありますね。その上、手慰みに始めたらしき絵や書にも才能を発揮しています。モテ男に死角なし、な場面ですね。
 前回は琴を弾くシーンもありましたが、そこで歌っていたのは物語中唯一、オリジナルの和歌なんですって。それ以外はほとんど、催馬楽(さいばら)という平安時代に流行っていた歌謡を歌っているらしいです。
 ・・という情報を、前回書くつもりで忘れていました。

 5コマ目で、都の人が海や山の様子を話していますが、これは『若紫』の中でこういうシーンがあるそうですね。知らずに描いています。いずれその場面も漫画にする日が来るのでしょうか。

 千枝と常則は村上天皇時代の絵師だそうです。常則さんは飛鳥部常則という名で、「栄華物語」にも登場しているとか、絵は残ってないけど評伝は伝わってるんですね。一方、千枝さんについての詳細は不明のようです。
 ともかく、そういう有名な画家を呼んできて、源氏の描いた線画に着色させてみたいものだ、と皆で褒めているところです。褒めているのかサービスコメントなのか、真偽はわからないですけど、ずっとお仕えしていた人たちのことですから、本気の賞賛なんでしょう。本文の「四五人」はもちろん、四、五人のことで四十五人ではありません。
 

P.S. ame先生、ありがとうございました!
posted by juppo at 18:25| Comment(0) | 源氏物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年10月16日

須磨の秋@

リクエストにお応えします。久しぶりに『源氏物語』です!!
〈本文〉
 須磨には、いとど心づくしの秋風に、海はすこし遠(とほ)けれど、行平の中納言の、関吹き越ゆると言ひけん浦波、よるよるはげにいと近く聞こえて、またなくあはれなるものは、かかる所の秋なりけり。
御前にいと人少なにて、うち休みわたれるに、ひとり目をさまして枕をそばだてて四方(よも)の嵐を聞き給ふに、波ただここもとに立ちくる心ちして、涙落つともおぼえぬに枕浮くばかりになりにけり。琴(きん)をすこし掻き鳴らし給へるが、我ながらいとすごう聞こゆれば、弾きさし給ひて、

 恋(こひ)わびてなく音(ね)にまがふ浦波は思ふかたより風や吹くらん

とうたひ給へるに、人々おどろきて、めでたうおぼゆるに、しのばれで、あいなう起きゐつつ、鼻を忍びやかにかみわたす。
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〈juppo〉『源氏物語』は苦手です。初巻の「桐壺」くらいなら何とかついていけるのですが、この辺のお話になると、今どのくらいの時期で源氏と誰が何をどうしているのか、さっぱりです。
 とりあえず、源氏は主人公ですよ。画像名はsmaですが、主人公は光源氏です。今さら紹介されてないですけど。
そして「須磨」とは今の神戸市須磨区に当たる、地名なんですね。
 
 なぜ源氏一行が須磨にいて、やたら悲しそうなのかもさっぱり分からないまま実は描いていましたが、今ちょっと調べたら、朧月夜との恋愛のために追い詰められた源氏が都から須磨に退去することになったとか何とか、だそうです。朧月夜はそういうわけで女性の名前ですね。源氏にはすでに息子がいて、その息子のためにも退去を決意したとか。このブログでご紹介している『源氏物語』は「若紫」ぶりなので、その時からはだいぶ時間が経っているようです。

 行平の中納言とは在原行平という人のことで、須磨に蟄居させられた経歴があり、そこで詠んだ歌が古今集などに入ってるんですね。「関吹き越ゆる・・・」の歌は、
 秋風の関吹き越ゆるたびごとに声うち添ふる須磨の浦波
というのだそうです。
 5コマ目は、涙の海に枕が浮いている様子を描いていますが、「枕浮く」という語が「枕が浮いてしまうほどたくさんの涙を流す」というような意味なのでその意味通りの絵にしただけで、実際にはこんなことは起こってないと思います。漫画とはそういうものですよね。

 描いてる本人があまり良くわかってないまま描いてるので、説明もおぼつかないですが、何しろ「源氏の身の上」とは都に残した愛する人や親しい人たちを思い出して悲しんでる身の上かな、なんて思って読んでください。
 続きがあります。もう1回。少しお待ちください。


 ところで!
前回の記事に書くつもりですっかり忘れてしまったまま、お知らせするのが1ヶ月遅くなってしまったのですが、お知らせです!

 『高校古文こういう話』の書籍化第三弾が発売になります!!

 ありがとうございます。皆さんのおかげで3冊目の本が出ます。発売日は11月中だと思われます。続報もお待ちください。
posted by juppo at 02:30| Comment(4) | 源氏物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする