2019年05月28日

虫愛づる姫君D

もう5回目ですよ。まだ続くんですかねー。
〈本文〉
いぼじり・かたつぶりなどを取り集めて、歌ひののしらせて聞かせ給ひて、我も声をうちあげて、「かたつぶりのつのの、あらそふやなぞ」といふことをうち誦(ずん)じ給ふ。わらはべの名は、例のやうなるはわびしとて、虫の名をなむつけ給ひたりける。けらを・ひきまろ・いなかたち・いなごまろ・あまひこなむなどつけて、召し使ひ給ひける。
 かかること世に聞こえて、いとうたてあることをいふ中に、ある上達部(かんだちめ)のおほむこ、うちはやりてものおぢせず、愛敬(あいぎやう)づきたるあり。この姫君の事を聞きて、「さりともこれにはおぢなむ」とて、帯の端のいとをかしげなるに、蛇(くちなは)の形をいみじく似せて、動くべきさまなどしつけて、いろこだちたる懸(かけ)袋にいれて、結びつけたる文を見れば、
 はふはふも君があたりにしたがはむ
  長き心のかぎりなき身は
とあるを、
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〈juppo〉まだまだ続くんですよ〜。これでまだ、半分くらいなんじゃないかなぁ、とぼんやりと。
5回目まで描いてきて気づいたことがあります。姫が集めている虫の中にカタツムリが入っている!
カタツムリも虫ですか?昆虫の定義は体が三分割されていて脚が6本、だと思いますが、もちろんこの時代にそんな分類はないですよね。そもそも姫は昆虫に限らず、毛虫などなどを集めているんですからそんな分類以前の問題でしたね。それで、カタツムリは一応、巻貝の仲間ですね。

 とりあえず姫はカタツムリも集めています。カマキリとカタツムリに歌わせているのかと思われそうですが、歌うのは手下の子どもたちのようです。なぜそんな事をしているのか謎ですが、前回、毛虫からは故事や詩歌を思い出せない、というところで終わっていましたから、毛虫以外の虫をネタに、自分たちで歌ってしまおうという余興なんでしょうか。
 
 今回は新たな人物も登場しています。ある上達部の「おほむこ」というのは、「大御子」の事かもしれないし、「大婿」かもしれないらしいです。婿でいいか、と娘婿にしておきました。
 この人にも名前があるんですけど、次回以降に出てくるんです。後から名前が明らかになるのがこの物語のルールのようです。
 姫も変わっていますがこの男もちょっと変わってる感じです。
 世間の評判というのは悪いことほど伝わりやすいものですが、そんな評判を耳にしながらその姫の気を引こうとしています。えっ、婿なのに?
  
 「これにはビビるだろ」と言わせておきながら、毎度のことながら作り物の蛇が全然誰もビビりそうにない可愛い造形になってしまってすみません。
 蛇を「くちなは」というのは、「朽ち縄」に似ているからなんですって。いやー、縄なら朽ちててもいいですけど蛇はやだなー。

 本当はどんな作り物の蛇なのか、皆さんも想像しながら次回をお待ちください。


 今週後半は、京都に行ってきます。
 無事に帰京したら来週の今ごろ、更新します!
posted by juppo at 01:39| Comment(0) | 堤中納言物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月21日

虫愛づる姫君C

順調に続きをお届けします。ヒマなので、ミシン踏んだりしていますよ。
〈本文〉
左近といふ人、
 冬くれば ころもたのもし寒くとも
  かはむし多く見ゆるあたりは
「衣(きぬ)など著(き)ずともあらなむかし」など言ひあへるを、とがとがしき女聞きて、「若人
たちは、何事言ひおはさうずるぞ。蝶めで給ふなる人も、もはらめでたうもおぼえず。けしからずこそおぼゆれ。さて、又(また)かはむしならべ、蝶と言ふ人ありなむやは。ただそれが蛻(もぬ)くるぞかし。そのほどを尋(たづ)ねてし給ふぞかし。それこそ心深けれ。蝶はとらふれば、手にきりつきて、いとむつかしきものぞかし。又蝶はとらふれば、わらは病(やみ)せさすなり。あなゆゆしともゆゆし」と言ふに、いとどにくさまさりて言ひあへり。
 この虫どもとらふるわらはべには、をかしきもの、かれがほしがるものを賜へば、さまざまに恐ろしげなる虫どもを取り集めて奉る。かはむしは毛などはをかしげなれど、おぼえねばさうざうしとて、
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〈juppo〉口さがない侍女たちの姫へのディスりは続きます。と、そこにまたお約束のようにうるさい上司が登場するんですねー。この人はどういう人なのか詳しく書かれてないですが、「とがとがし」がもともと大人のことを言ってたのが誤って伝わってる説もあるようなので上司にしときました。そこまで解釈しなくても、話してる内容から年上の人が説諭に現れた、という感じに読めますよね。
 しかしそういう場合、たしなめられた側にとっては火に油を注いだも同然で、結局侍女たちの陰口は止まる気配がないのでありました。

 そんなやり取りは知る由もなく、虫集めに無心の姫です。虫を可愛がる姫は小さい子どもにも親切ですね。ちゃんとご褒美をあげて手なずけています。
 最後のコマで毛虫を物足りないと言っているのは、毛虫から故事や詩歌など思い出されるものがないので何か物足りない、という意味だそうですが、「おぼえねば」の意味はよく分からないセリフみたいです。
 虫を愛でて観察するに飽き足らず、文学的な側面からも楽しもうとする姫、と押さえておけば良いでしょうか。とりあえず。
 続きます。また来週、と思っています。

 
 ミシン踏んでワンピース作りました。
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posted by juppo at 00:31| Comment(0) | 堤中納言物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月13日

虫愛づる姫君B

続きです。順調に更新が続いているのは、ヒマだからです。
〈本文〉
「きぬとて人々の着るも、蚕のまだ羽つかぬにし出だし、蝶(てふ)になりぬれば、いともそでにて、あだになりぬるをや」とのたまふに、いひ返すべうもあらずあさまし。さすがに親たちにもさし向かひ給はず、「鬼と女とは人に見えぬぞよき」と、案じ給へり。母屋(もや)の簾(すだれ)をすこしまきあげて、几帳(きちやう)いでたてて、かくさかしく言ひ出だし給ふなりけり。
 これを若き人々聞きて、「いみじくさかし給へど、ここちこそまどへ。この御あそびものよ。いかなる人、蝶めづる姫君につかまつらむ」とて、兵衛(ひやうゑ)といふ人、
 いかでわれ とかむかたなくいでしがな
  かはむしながら見るわざはせじ
と言へば、小太夫(こだいふ)といふ人、笑ひて、
 うらやまし 花や蝶やといふめれど
  かはむしくさき世をも見るかな
などいひて笑へば、「からしや。眉はしも、かはむしだちためり。さて歯ぐきは、皮のむけたるにやあらむ」とて、
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〈juppo〉昨年の今ごろは仕事に追われていたような気がしますが、今年は現在ほとんど失業状態の私です。そんな時は家の中を片付けたりブログを更新したり無理せず出来ることをしようかな、と呑気に構えていたら大してそれらもはかどらず、ぐうたら生活な有様です。
 
 まだまだこのお話は先が長いんです。これから虫愛づる姫君が何をして活躍するのかも楽しみですが、次々にいろんな人物が登場します。今回は、姫が可愛がっている虫に怖気づいて逃げていた侍女たちが、姫を好き放題ディスっている、という場面です。姫君に名前がないのに侍女たちには名前があるんですね。兵衛とか小太夫とかの名前は男の人みたいで、ざっと読んでると侍女のセリフということが解りにくいです。実際それらは男の人の呼び名で、彼女らの父親や夫がそういう役職についてるとかいうことからそう呼ばれてるようですよ。
 
 いつの時代も、女子が集まるとこんな会話で盛り上がるのだなーという感じですね。給湯室のOLみたい、という表現はもう差別の対象ですか。
 えげつない会話ですけど、誰かを褒めるより悪口を言う方が楽しいのも事実だったりします。陰口は良くないと思いつつ、キレイごとばかりは言えないです。ただ、面と向かってからかったり傷つけるのは、やめましょう。
 姫が親たちに面と向かって言わない「鬼と女とは人に見えぬぞよき」と言う言葉は、鬼はもちろん見たら怖いから見えないのがいい、女は人に見られることなく家にこもって、結婚もしないのがいい、という意味なんですね。結婚できないことを正当化する表現として、流行っ・・・たりはしないでしょうね。

 後半、兵衛と小太夫という人らは歌を詠んでるんですけど、自然な会話のようになってるのでそんなふうに描いています。「かはむしながら」の「ながら」には今の「ながら」と同じような意味もあるのですが、「毛虫ごと」と訳されてる例があったのでそうしました。「そのままの状態で」という意味があるんですけど、付帯状況の with みたいに捉えると一番しっくりくると思いましたがどうでしょう。

 ヒマなうちにどんどん更新します。でも毎日はしません。とりあえず、また来週!
posted by juppo at 23:24| Comment(0) | 堤中納言物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月07日

虫愛づる姫君A

令和最初の投稿です!「れいわ」はまだ「令和」とすぐに変換できませんね。続きです!
〈本文〉
いと白(しろ)らかに笑みつつ、この虫どもを朝夕(あしたゆふべ)に愛し給ふ。人々怖(お)ぢわびて逃ぐれば、その御方は、いとあやしくなむののしりける。かく怖づる人をば、「けしからず、はうぞくなり」とて、いと眉黒にてなむにらみ給ひけるに、いとどここちなむまどひける。
 親たちは、「いとあやしく、さまことにおはするこそ」とおぼしけれど、「おぼしとりたることぞあらむや。あやしきことぞと思ひて、聞こゆる事は、深くさいらへ給へば、いとぞかしこきや」と、これをもいとはづかしとおぼしたり。「さはありとも音聞きあやしや。人はみめをかしき事をこそこのむなれ。むくつけげなるかはむしを興ずなると、世の人の聞かむも、いとあやし」と聞こえ給へば、「くるしからず。よろづの事どもをたづねて、末(すゑ)をみればこそ事は故(ゆゑ)あれ。いとをさなこことなり。かはむしの蝶(てふ)とはなるなり。」そのさまのなり出(い)づるを、取り出でて見せ給へり。
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〈juppo〉超大型連休はいかがでしたか、皆さん。私は「香川照之の昆虫すごいぜ!6時間目 アリ」を見ながら、録画保存しようと思ってて失敗しました。このお話の姫とカマキリ先生は同じ人種ですよね。姫は気味の悪い虫を愛するだけでなく、ちゃんと観察して蝶の羽化の様子なんて見てるんですもんね。そういう生命の神秘みたいなことには確かに興味をそそられますが、地面に這いつくばってアリを探したり、手のひらに毛虫を横たわらせるのは、私は真っ平御免です。好きな人はどうぞ、と止めはしませんが。

 そんな姫に対して、どのご家庭でもそうであるように親たちは世間体を気にしていますね。そしてどのご家庭でも大抵そうであるように、激しく反論されるのが怖いので娘に何も言えないと。貴族の家庭の姫なのに、ここまで強い性格なのが面白いですよね。意志の強いだけの女性なら他の作品にも出てきますが、言動がやたら強い。激しい。
 今後の姫の行動にも要注目です。
posted by juppo at 01:17| Comment(3) | 堤中納言物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする