2019年05月13日

虫愛づる姫君B

続きです。順調に更新が続いているのは、ヒマだからです。
〈本文〉
「きぬとて人々の着るも、蚕のまだ羽つかぬにし出だし、蝶(てふ)になりぬれば、いともそでにて、あだになりぬるをや」とのたまふに、いひ返すべうもあらずあさまし。さすがに親たちにもさし向かひ給はず、「鬼と女とは人に見えぬぞよき」と、案じ給へり。母屋(もや)の簾(すだれ)をすこしまきあげて、几帳(きちやう)いでたてて、かくさかしく言ひ出だし給ふなりけり。
 これを若き人々聞きて、「いみじくさかし給へど、ここちこそまどへ。この御あそびものよ。いかなる人、蝶めづる姫君につかまつらむ」とて、兵衛(ひやうゑ)といふ人、
 いかでわれ とかむかたなくいでしがな
  かはむしながら見るわざはせじ
と言へば、小太夫(こだいふ)といふ人、笑ひて、
 うらやまし 花や蝶やといふめれど
  かはむしくさき世をも見るかな
などいひて笑へば、「からしや。眉はしも、かはむしだちためり。さて歯ぐきは、皮のむけたるにやあらむ」とて、
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〈juppo〉昨年の今ごろは仕事に追われていたような気がしますが、今年は現在ほとんど失業状態の私です。そんな時は家の中を片付けたりブログを更新したり無理せず出来ることをしようかな、と呑気に構えていたら大してそれらもはかどらず、ぐうたら生活な有様です。
 
 まだまだこのお話は先が長いんです。これから虫愛づる姫君が何をして活躍するのかも楽しみですが、次々にいろんな人物が登場します。今回は、姫が可愛がっている虫に怖気づいて逃げていた侍女たちが、姫を好き放題ディスっている、という場面です。姫君に名前がないのに侍女たちには名前があるんですね。兵衛とか小太夫とかの名前は男の人みたいで、ざっと読んでると侍女のセリフということが解りにくいです。実際それらは男の人の呼び名で、彼女らの父親や夫がそういう役職についてるとかいうことからそう呼ばれてるようですよ。
 
 いつの時代も、女子が集まるとこんな会話で盛り上がるのだなーという感じですね。給湯室のOLみたい、という表現はもう差別の対象ですか。
 えげつない会話ですけど、誰かを褒めるより悪口を言う方が楽しいのも事実だったりします。陰口は良くないと思いつつ、キレイごとばかりは言えないです。ただ、面と向かってからかったり傷つけるのは、やめましょう。
 姫が親たちに面と向かって言わない「鬼と女とは人に見えぬぞよき」と言う言葉は、鬼はもちろん見たら怖いから見えないのがいい、女は人に見られることなく家にこもって、結婚もしないのがいい、という意味なんですね。結婚できないことを正当化する表現として、流行っ・・・たりはしないでしょうね。

 後半、兵衛と小太夫という人らは歌を詠んでるんですけど、自然な会話のようになってるのでそんなふうに描いています。「かはむしながら」の「ながら」には今の「ながら」と同じような意味もあるのですが、「毛虫ごと」と訳されてる例があったのでそうしました。「そのままの状態で」という意味があるんですけど、付帯状況の with みたいに捉えると一番しっくりくると思いましたがどうでしょう。

 ヒマなうちにどんどん更新します。でも毎日はしません。とりあえず、また来週!
posted by juppo at 23:24| Comment(0) | 堤中納言物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする