2019年06月26日

虫愛づる姫君H

いつもより更新が遅れ気味です。この間、遊んだり働いたりしておりました。続きです。
〈本文〉
化粧(けさう)したらばきよげにはありぬべし心うくもあるかなとおぼゆ。かくまでやつしたれど、みにくくなどはあらで、いと様異(さまこと)に、あざやかに気高く、はれやかなるさまぞあたらしき。練色(ねりいろ)の綾(あや)の袿(うちぎ)ひとかさね、はたおりめの小袿(こうちぎ)ひとかさね、白きはかまを好みて著(き)給へり。この虫をいとよく見むと思ひて、さし出(い)でて、「あなめでたや。日にあぶらるるが苦しければ、こなたざまに来るなりけり。これを一も落とさで追ひおこせよ。わらはべ」とのたまへば、突き落とせば、はらはらと落つ。白き扇(あふぎ)の、墨ぐろに真名(まんな)の手習(てならひ)したるをさし出でて、「これに拾ひ入れよ」とのたまへば、わらはべ取りいづる。みな君たちも、あさましう、「さいなんあるわたりに、こよなくもあるかな」と思ひてこの人を思ひて、いみじと君は見給ふ。
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〈juppo〉前回からずっと、多分次回も、引き続き姫を覗き続ける右馬の助と中将です。とにかくずっと観察してますよね。姫に対する感想が上がったり下がったりしていますが、素材はいいのにそれなりに装ってないのが惜しい、という結論のようですね。
 今回は姫の装束が詳しく説明されています。「練色」は薄い黄色味を帯びた白だそうです。「はたおりめ」はキリギリスのことだそうなんですけど、この時代のキリギリスは今のコオロギだそうです。・・・て、コオロギ模様の着物!?小袿は袿の上に著る着物だそうなので、この姫のアウターがコオロギ模様だということですよ。改めて、攻めた装いの姫ですね。白いハカマも、普通女子は着ないそうです。現代人から見ても、だんだん姫が本当に普通じゃないことがわかってきましたね〜。

 毛虫が木の幹を這っているのが、日に当たらない方向に移動しているのか!ということにいたく感心してその毛虫を拾い集めさせる姫の様子を見て、やはり右馬の助もびっくりです。一筋縄では行かなさそうな雰囲気を感じ取ったのでしょうか。
「さいなんあるわたり」は「才学ある家庭に」とする訳もあるようです。「こよなく」が「この上なく」という意味なので、「才学ある家庭にとんでもない娘がいたもんだ」なんて訳しても良かったのですが、驚きつつも姫の容姿から目を離さない右馬の助、てことにしときました。

 次回はもう10回ですね〜。できたらまた来週!


 ところで週末、群馬サファリーパークに行ってきました。
 ドアミラーにツノを擦り付けに来るエランド?
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 草食動物の匂いが残っているのかライオンも来ました。
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 羊は自分の毛にすりすり。
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posted by juppo at 05:50| Comment(2) | 堤中納言物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月18日

虫愛づる姫君G

前々回のミスは修正しました。続きです。
〈本文〉
あやしき女どものすがたをつくりて、按察使(あぜち)の大納言の出(い)で給へるほどにおはして、姫君の住み給ふ方の北面(きたおもて)の立蔀(たてじとみ)のもとにて見給へば、男(を)のわらはの異なる事なき、草木どもにたたずみありきて、さて言ふやうは、「この木にすべていくらもありくは。いとをかしきものかな」と、「これ御覧ぜよ」とて、簾(すだれ)をひきあげて、「いとおもしろきかはむしこそ候へ」といへば、さかしき声にて、「いと興ある事かな。こち持てこ」とのたまへば、「取りわかつべくも侍らず。ただここもとにて御覧ぜよ」といへば、あららかに踏みて出づ。簾を押し張りて、枝を見はり給ふを見れば、頭へきぬ着あげて、髪もさがりばきよげにはあれど、けづりつくろはねばにや、しぶげに見ゆるを、眉いと黒く、はなばなとあざやかに、涼しげに見えたり。口つきも愛敬(あいぎやう)づきてきよげなれど、歯ぐろめつけねば、いと世(よ)づかず。
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〈juppo〉今年に入ってLINEスタンプを作成していた間に、Macのお絵かきソフトを少し使いこなせるようになりました。おかげで前々回の原稿の修正もPC上で片付けられたんですけど、何度もやり直す必要が生じたりして、丸々描き直した方が早かったくらいでした。まだまだです。

 さて前回、中将と何やら相談することにした右馬の助でしたが、まさか女装する結論に達したとは。この人の行動にはいちいち意表を突かれますね。そしてこの時代、こうして隠れて女を覗き見するのがデフォだったんでしょうか。いつも誰か覗いてますよねぇ。
 女装という手段に走ったのには、前回作り物の蛇が相当巧みに作られていたのが一応伏線になっていて、女装もかなり巧みに装っているんだろう、ということらしいですよ。そんなことに才能を発揮しなくても・・という気もしないでもないです。
 
 姫の見た目については前にも説明があったので同じことのくり返しのようですが、右馬の助にとっては初めて見る姫の容姿なので改めて詳しく語られているんですね。男性の審美眼で見ているので、個人の感想的な説明になっています。
 「頭へきぬ着あげて」とあるので、着物を被ったような着方なんだと思いますけど、毛先が見えるほど髪が外に出ている状態でその着方に描くことができませんでした。ずっと着物を被っている姫を描き続けるのもどうかとも思ったり。
 「いと世づかず」には「色気がない」とする訳もありましたが、「世」と言っているので「世間並みでない」という意味の方を採用しました。

 次回も覗き続ける男たちにご期待ください。
posted by juppo at 03:56| Comment(0) | 堤中納言物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月11日

虫愛づる姫君F

前回の漫画にミスがあることに気づきました。お詫びは後ほど。続きです。
〈本文〉
大殿(おとど)太刀(たち)をひきさげてもてはしりたり。よく見給へば、いみじうよく似せて作り給へりければ、手に取り持ちて、「いみじう物よくしけるひとかな」とて、「かしこがりほめ給ふと聞きてしたるなめり。かへりごとをして、はやくやり給ひてよ」とて、渡り給ひぬ。
 人々、つくりたると聞きて、「けしからぬわざしける人かな」と言ひにくみ、「かへりごとせずはおぼつかなかりなむ」とて、いとこはくすくやかなる紙に書き給ふ。かなはまだ書き給はざりければ、片かんなに、
 ちぎりあらば よき極楽にゆきあはむ
  まつはれにくし 虫のすがたは
「福地(ふくち)の園(その)に」とある。むまのすけ見給ひて、「いとめづらかに、さま異(こと)なる文(ふみ)かな」と思ひて、「いかで見てしがな」と思ひて、中将といひ合はせて、
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〈juppo〉毎日よく雨が降りますが、そういえば梅雨入りしたんでしたね。梅雨にしては寒すぎて、季節がよくわからなくなりますね。
 
 蛇のおもちゃを仕掛けたアイツの名前が明らかになりました。「むまのすけ」とありますが、漫画にあるように「右馬の助」と書いて「うまのすけ」と読み、右馬寮の次官だそうです。右馬寮は「うめりょう」と読んだりもするようです。左馬寮もあって、馬寮というのがお役人や貴族の乗る馬を飼育したり管理したりする部署のことなんですね。
 うまのすけというと「マカロニほうれん荘」を思い出す私です。そのせいではないと思いますが、4コマ目の侍女たちの会話がなんだか「たまりませんわん!」になってしまっています。
 
 さて、ようやく名前もはっきりした右馬の助ですが、姫と手紙をやりとりして初めて「会いたいものだ」と思っているので、実はまだこの時点で姫に会っていません。すみません。お詫びはここです。前回、蛇入り袋を持ってきた人物がこの人だと思って描いていましたが、袋は届けられただけで本人持参ではなかったようです。近いうちに訂正原稿に差し替えたいので、お待ちください。訂正後にお読みになった方には何のことやら、な説明になっていると思います。

 父に促されて手紙の返事を書く姫、紙の選び方から字の書き方まで個性出まくりのようです。まず上等な薄い紙ではなく硬い紙に、平仮名で書くのが普通なのにカタカナで!という書き方なんですね。当時は平仮名を女文字と呼んで、年ごろの女性はそれで書くのが普通だったそうですが、何しろこの姫に「普通」は通用しないんでしたね。「普通だったら何よ」みたいに堂々とできるのはカッコいいですけどね。

 突然登場した「中将」は近衛府の次官か何かだそうで、要するに右馬の助の友人です。二人で相談するのは、もちろん姫へのアタック大作戦、てことですね。
 その辺は次回に乞うご期待。前回の訂正もそのころまでには。
posted by juppo at 02:27| Comment(0) | 堤中納言物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月03日

虫愛づる姫君E

京都に行ってきました。無事に戻ってきて更新できることを嬉しく思います。あ、ついでに誕生日の今日、更新できたのも嬉しいです。
〈本文〉
何心なく御前(おまへ)にもて参りて、「袋などあぐるだにあやしくおもたきかな」とて、ひきあけたれば、蛇(くちなは)首をもたげたり。人々心をまどはしてののしるに、君はいとのどかにて、「なもあみだ仏、なもあみだ仏」とて、「生前のおやならむ。な騒ぎそ」とうちわななかし、顔ほかやうに、「なまめかしきうちしも、けちえんに思はむぞ、あやしき心なるや」と、うちつぶやきて、近くひきよせ給ふも、さすがに恐ろしくおぼえ給ひければ、立ち処(どころ)居(ゐ)処、蝶(てふ)のごとく、せみ声にのたまふ声の、いみじうをかしければ、人々にげさわぎて笑ひいれば、しかじかと聞こゆ。「いとあさましくむくつけき事をも聞くわざかな。さるもののあるを見る見る、みな立ちぬらむことぞあやしきや」とて、
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〈juppo〉京都タワーには登りませんでしたが、京都タワーの地下にあるお風呂屋さんには行きました。清水寺は修復中でした。

 さて、前回仕込んだ蛇のおもちゃ入り袋は、やっぱりこういう使用法だったのですね。他に考えられませんね。面白いのは、それくらい何てことないのでは?というキャラの姫が、結構まんまと怖がってくれていることです。虫は大丈夫でも蛇はダメなんですね。
 その、怖がってあたふたする姫の様子が、「蝶のごとく」とか「せみ声」とか虫を使って言い表しているのも面白いですね。侍女たちはその様子が滑稽だと笑い転げていますが、急に女の子らしい一面を見せる姫が、ちょっと可愛いですよね。

 一連の出来事をしかじかと姫の父に伝えたのは誰だかよくわからないのですが、笑い転げている侍女たちが自分で伝えたわけではないようなので、他の誰かと同じキャラにならない絵にしてあります。ただの伝令役なのであまり気にしないでください。

 今回、全文を訳してから一話ずつ漫画にしてるんですけど、あまり時間をかけて描いているせいで、この続きがどんな話だったかすっかり忘れています。
 次回もお楽しみに、と言いながら私も楽しみです。
 また1週間後くらいに!
posted by juppo at 23:35| Comment(0) | 堤中納言物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする