〈本文〉
竃(かまど)を三重(みへ)にしこめて、工匠らを入れたまひつつ、皇子も同じ所に籠(こも)りたまひて、領(し)らせたまひたるかぎり十六所(そ)をかみに、蔵をあげて、玉の枝を作りたまふ。
かぐや姫ののたまふやうに違(たが)はず作りいでつ。いとかしこくたばかりて、難波にみそかに持(も)ていでぬ。「船に乗りて帰り来(き)にけり」と殿に告げやりて、いといたく苦しがりたるさましてゐたまへり。迎へに人多く参りたり。玉の枝をば長櫃(ながひつ)に入れて、物おほひて持ちて参る。いつか聞きけむ、「くらもちの皇子は優曇華(うどんぐゑ)の花持ちて上(のぼ)りたまへり」とののしりけり。
これを、かぐや姫聞きて、我はこの皇子に負けぬべしと、胸つぶれて思ひけり。

〈juppo〉昔は8月31日と言えば夏休み最終日というのが常識でしたが、今は、特に今年は夏休みの日程が相当イレギュラーになってるようですから、特段いつもの月末とそう変わるところはないかもしれませんね。としまえんの閉園の方が大問題ですよね。1回くらいしか行ったことのない都民の私が言うのも何ですが。
前回は、くらもちの皇子が人の立ち寄らないような家を作ったところまででした。その家に、カマドを作って厳重に隠しているのはその中で玉の枝を「作って」いるからです。そうです。玉の枝を探しに行く気が全くないことはわかっていましたが、最初から作るつもりだったんですね。その手があったか、という感じですけど、作れるものなんでしょうか。話に聞いただけなのに。「かぐや姫だって話に聞いてるだけで見たことはないはず」との確信があったのでしょうね、多分。
その偽物をあたかも遠いところまで取りに行ったテイで、行ったり来たり、疲れたフリをしてみたり、策士は策士なりに努力を惜しまないようです。
見ていた人たちが「優曇華の花」だと騒いでいますが、どこから「うどんげ」?な唐突な噂です。
「優曇華の花」とは仏教で、三千年に一度花が咲く時に仏が現れるとかいう教えがある想像上の樹木なんだそうです。やたら皇子が仰々しく働いているので、見ている人たちにはそれくらい珍しく大事な物を持って来たのだ、と思えたのですね。
かぐや姫もそんな噂に煽られて敗北宣言が出かかってますが、自分でリクエストしておいてそれに応えられたら負けなんですか。リクエストというより挑戦だったんですね。それで負けたら大人しく結婚するつもりがあったんですかねぇ。
とりあえず、この2回分だけ描いたんですけど、まだこの対決に決着がついてないので続きを描きます。少々お待ちください。