2020年10月31日

くらもちの皇子と蓬萊の玉の枝C

恒例の月末更新の日がやってきました。今月もしっかり更新しますよ。続きです。
〈本文〉
 この皇子、「今さへ、なにかといふべからず」といふままに、縁(えん)に這(は)ひのぼりたまひぬ。翁理(ことわり)に思ふ。
 「この国に見えぬ玉の枝なり。このたびは、いかでか辞(いな)びまうさむ。人ざまもよき人におはす」などいひゐたり。
 かぐや姫のいふやう、「親ののたまふことをひたぶるに辞びまうさむことのいとほしさに」と、取りがたき物を、かくあさましく持て来ることを、ねたく思ふ。翁は、閨(ねや)のうち、しつらひなどす。
 翁、皇子に申すやう、「いかなる所にかこの木はさぶらひけむ。あやしくうるはしくめでたき物にも」と申す。
 皇子、答へてのたまはく、「一昨々年(さをととし)の二月(きさらぎ)の十日ごろに、難波より船に乗りて、海の中にいでて、行かむ方(かた)も知らずおぼえしかど、思ふこと成(な)らで世の中に生きて何かせむと思ひしかば、ただ、むなしき風にまかせて歩(あり)く。命死なばいかがはせむ、生きてあらむかぎりかく歩きて、蓬萊(ほうらい)といふらむ山にあふやと、
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〈juppo〉何やかやと忙しく過ごしております。家にいるとぼんやりしてしまうんですけどね。ですからこうして、するべきことを見つけて作業しています。

 さて、くらもちの皇子の冒険譚が今回から始まります。ウソなんですけどね。「一昨々年」は「さをととし」と読むようですが、一昨年の前年ということで、3年前になります。この前の石作皇子も3年ほど冒険してきた作り話をしてましたよね。要するにかぐや姫がギフトのリクエストをしてからそれが集まるまでに、3年かかっているということですね。どこにも出かけてないけど屋敷やら工房やら偽の玉の枝を作っていましたから、それに3年くらいはかかるでしょうね。

 かぐや姫にしてみれば、無理やりリクエストを並べたのも翁の願いをずっと断ってきたのが申し訳なくて仕方なく出した注文なのだと。これ以上断り続けるより向こうから断ってくるのに賭けた作戦ですね。双方あれこれ心を尽くしている親子関係が優しいです。

 後半の皇子のセリフに何度か「歩く」と出てきますが、ここでは足でテクテク歩くという意味ではなく、訳のように「進む」とか、行動全てに当てはまる語だそうです。フレキシブルですね。
posted by juppo at 22:14| Comment(0) | 大和物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年10月18日

松本城

 2020年10月17日土曜日、午後7時過ぎに母が亡くなりました。

 歩けなくなってちょうど1年、最後は自宅で看取りました。老衰です。大きな病気もせず、23日に88歳になる直前で、老衰になるのにはもっと時間があると思っていただけに、悔いが残ります。

 このブログで「〇〇に行ってきました!」と報告した旅行は、全て母と一緒に行っています。SNSに投稿する写真も母のものばかりです。この先Facebookを開いて「○年前の思い出」と母の写真を見せられるかと思うと、今から切ない気持ちです。

 10年前に父が亡くなってから母と二人暮らしになったので、私の生活もそれまでの気ままなものから一変しましたが、母と二人でできることを楽しもうと思い、一緒にスポーツクラブに通ったり、私が行きたい場所には母の好むと好まざるとに関わらず連れて行ったりしました。温泉にも、海外にも、SMAPのコンサートにも。いつでも母は嫌がらず付き合ってくれたのです。私の友人とも顔なじみになってくれましたし、共通の知人がとても増えました。

 母と最後に行った旅行について、今までどこにも投稿していませんでした。今年の3月の終わりに、松本に行ったんです。
 緊急事態宣言のギリギリ前だったとはいえ、その頃すでにコロナ禍だったので大きな声で「旅行してきた!」と言いにくかったんですね。

 イラストの仕事で毎日絵を描いていると、どこかへ行きたい衝動に駆られて旅行サイトを検索する癖が私にはあるのです。
 母がもう車椅子移動だったので、車椅子でも入れる貸切温泉がある宿を探して、松本市浅間温泉にあるホテルに一泊しました。到着した夜は疲れた母を入浴させられませんでしたが、翌日チェックアウト前にリフト付きの湯船に母を浸からせることができました。
 その後、松本城を見て帰ろうと思ったんです。行ったことがなかったので。
 松本城もコロナ対策で城内には入れませんでしたが、車椅子を押して登城する気は毛頭なく、お城をバックに係員のお兄さんに写真を撮ってもらいました。

IMG_4055.JPG母が笑顔なのは、若いお兄さんが撮ってくれてるからです。
IMG_4058.JPG大きな声では言えなかったけど、行って良かったです。

 コロナ騒ぎが収まったらまたどこかへ行こうと検索は時々続けていて、ここ!という候補もあったのに。もっともっと、一緒に行きたかったのに。でも思い出はたくさんできました。ありがとう、お母さん。
posted by juppo at 02:14| Comment(2) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする