〈本文〉
その山、見るに、さらに登るべきやうなし。その山のそばひらをめぐれば、世の中になき花の木ども立てり。金(こがね)、銀(しろかね)、瑠璃色(るりいろ)の水、山より流れいでたり。それには、色々(いろいろ)の玉の橋わたせり。そのあたりに照り輝く木ども立てり。その中に、この取りて持ちてまうで来たりしはいとわろかりしかども、のたまひしに違(たが)はましかばと、この花を折(を)りてまうで来たるなり。

〈juppo〉どっぷりシェイクスピアな週末を2週ほど過ごしておりました。チラシ作りのみお手伝いの予定でしたが、千秋楽には撮影担当にまで昇格していました。
さて、今回もくらもちの皇子の武勇伝の続きです。話が長いヤツの話が面白かったためしはないんですが、延々続く物語はなかなか独創性があって飽きさせない構成なのはさすがです。意表を突かれたことには、前回思わせぶりに登場したるりちゃんは、もう出てこないんですね。
大冒険の末にお望みのものを手に入れてやったぜ!な、自慢話なんですけど、謙遜するのも忘れていません。もっといい枝があったんだけど、言われた通りのクオリティを重視した結果、この枝を折ってきたのだと。
「山のそばひら」の「そば」は近くという意味ではなく、険しい斜面のことだそうです。「そばだつ」の「そば」なんですね。
何しろこの山の様子だとか橋の造りだとか、私には見たことがないどころのレベルではなく、しつこいようですが皇子の作り話なので、こんな風に絵にしましたけれども、どんな山でどんな様子なのかは皆さんそれぞれ、空想しながら読んでくださいね。そもそも「世の中になき」木や花なんて、想像の域を超えますよね。聞いてる翁やかぐや姫も「ぽかーん」だったのではないでしょうか。