2021年04月20日

阿倍(あべ)の右大臣と火鼠(ひねずみ)の皮衣(かわぎぬ)E

冬じゅう庭の草刈りをしても、この時期になると一斉にまた伸び盛りです。雑草の生命力が羨ましい限りです。続きです。
〈本文〉
 かぐや姫、翁にいはく、「この皮衣は、火に焼かむに、焼けずはこそ、まことならめと思ひて、人のいふことにも負けめ。『世になき物なれば、それをまことと疑ひなく思はむ』とのたまふ。なほ、これを焼きて試(こころ)みむ」といふ。
 翁、「それ、さもいはれたり」といひて、大臣に、「かくなむ申す」といふ。大臣答へていはく、「この皮は、唐土(もろこし)にもなかりけるを、からうじて求め尋(たづ)ね得たるなり。なにの疑ひあらむ」。「さは申すとも、はや焼きて見たまへ」といへば、火の中にうちくべて焼かせたまふに、めらめらと焼けぬ。「さればこそ、異物(こともの)の皮なりけり」といふ。大臣、これを見たまひて、顔は草の葉の色にてゐたまへり。かぐや姫は、「あな、嬉し」とよろこびてゐたり。
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〈juppo〉わりと荒唐無稽な物語でありながら、「竹取物語」には時々極めて常識的な場面が出てきます。「世にも珍しい」から「本物だ」とは限らないわけです。そりゃそうですね。
 翁は相変わらず物分かりが良いので、かぐや姫の言い分を素直に受け入れて燃焼実験へと進みました。

「なんで疑うんだ」と異を唱える安倍御主人の言い分も、わからないではありません。この人はこれまでの候補者とは違って、お手軽に手に入れたとはいえ偽物を用意しようとは考えてなかったのですから、本物の皮だと信じるのも無理はありません。お育ちがいいことですし(推定)。

 偽物であっても、なにしろ素晴らしい皮だったようですから、燃えてしまったのはもったいなかったですねぇ。
 それでもかぐや姫が「あな、嬉し」と喜んでいるのは、この証明によって安倍御主人と結婚しなくてよくなったからです。何事も証明が肝心ですね。仮説・証明・結論ですね。

 火鼠の皮衣も本物が手に入れられなかったことがわかりました。お話はもう1回あります。安倍御主人の残念な退場まで、見届けなければなりません。
posted by juppo at 21:13| Comment(0) | 竹取物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする