2021年08月26日

鳥飼院B

また暑くなりました。いつまで暑いのでしょう。体が持ちません。最終回です。
〈本文〉
かづきあまりて、ふた間(ま)ばかり積みてぞおきたりける。かくて、かへりたまふとて、南院(なんゐん)の七郎君(しちらうぎみ)といふ人ありけり。それなむ、このうかれめのすむあたりに、家つくりてすむと聞(きこ)しめして、それになむ、のたまひあづけたる。「かれが申さむこと、院に奏(そう)せよ。院よりたまはせむ物も、かの七郎君につかはさむ。すべてかれにわびしきめな見せそ」とおほせたまうければ、つねになむとぶらひかへりみける。
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〈juppo〉夏バテで果ててしまう前に最終回を迎えられて何よりです。もうすっかりお忘れかもしれませんが、「かづく」という動詞の話を前回しました。回をまたいで、今回その「かづく」から始まっています。これについての説明は前回したのでもういいですね。

 とにかくご褒美に衣服をたんまりいただいたようです。いただいた衣服は左肩にかけるそうなんですが、かけきらないので積んであります。「ふた間」の「間」には今のように「部屋」という意味と「柱と柱の間」という意味があるそうです。積まれたものの量が、すごくたくさんなんだろう、と思っておけば良いと思います。

 帝はこの遊女を気に入ったのでしょうが、そこはやはり身分というものがあるので、しかるべき所に置いて、ちょっと離れて大事にしようと思ったようですね。「南院」は天皇の皇子の一人を指すようですが、「七郎君」が誰なのかは定かでないようです。それなりに確かな身の上の人なんでしょう、世話を頼むくらいですから。つい「しちろうくん」と読んでしまいますが、別にそれでもいいと思います。違ってますけど。

 最終回なのに、なんだか投げやりな説明になってますね。暑さのせいだと思ってください。
 次回に何を描くかも、ちょっと未定です。
posted by juppo at 21:25| Comment(0) | 大和物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年08月16日

鳥飼院A

ずーっと雨が降っています。皆さんの地域では被害はなかったでしょうか。続きです。
〈本文〉
うけたまはりて、すなはち、

 あさみどりかひある春にあひぬればかすみならねどたちのぼりけり

とよむ時に、帝、ののしりあはれがりたまひて、御しほたれたまふ。人々もよく酔(ゑ)ひたるほどにて、酔ひ泣きいとになくす。帝、御袿(うちぎ)ひとかさね、はかまたまふ。「ありとある上達部(かんだちめ)、みこたち、四位五位、これに物ぬぎてとらせざらむ者は、座より立ちね」とのたまひければ、かたはしより、上下(かみしも)みなかづけたれば、
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〈juppo〉前回お題が出た「鳥飼」の歌からの第2回です。だいたいこういう、歌の解釈とか修辞法とか、テストに出るんですよねーめんどくさいですねー。
 「あさみどり」はここでは「かすみ」にかかる枕詞ですが、「あさみ『どりかひ』ある」までに「とりかひ」=「鳥飼」が入っている!という、「隠題歌」てなものにもなっているのですね。芸が細かいです。

 「しほたる」は漢字で書くと「潮垂る」で、海や湖の水に濡れた様子を言った言葉らしいですが、袖が濡れるのは泣いてるってことだな、と「泣く」という意味にも使うのですね。まあロマンチックな、というか遠回りな言い方ですよね。

 ところで「酔ひ泣きいとになくす」は、3コマ目のように訳したために「なくす」が「泣く」を意味するように見えてしまいそうですが、これは「に(二)なく、す」なんです。「またとなく、する」ということです。何をするかというと「酔ひ泣き」を、です。

 歌が素晴らしかったので、思わずご褒美をあげてしまう帝です。他の人もあげるように強要さえしています。「かづけたれば」の「かづく」という動詞には、「衣服や布を与える」という意味と、もらった衣服や布を「左の肩にかける」という意味があります。与えるのともらうのと両方の意味が?と思いますが、与える方は下二段、もらう方は四段と、これまたテストに出そうな違いがあるようです。では「かづけたれば」はどっち?

 珍しく真面目な解説になってしまいました。お話の中では、歌に感動しているようで一堂酔っ払いの集団なのかな、という見方もできるわけですが。

 もう1回続きます。近日中に。
posted by juppo at 02:03| Comment(0) | 大和物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年08月06日

鳥飼院@

ご無沙汰してしまいました。暑いですね。リクエストにお応えします。『大和物語』第百四十六段です、
〈本文〉
 亭子(ていし)の帝、鳥飼院(とりかひのゐん)におはしましにけり。例のごと、御遊びあり。「このわたりのうかれめども、あまたまゐりてさぶらふなかに、声おもしろく、よしあるものは侍(はべ)りや」と問(と)はせ
たまふに、うかれめばらの申すやう、「大江(おほえ)の玉淵(たまぶち)がむすめと申す者、めづらしうまゐりて侍り」と申しければ、見せたまふに、さまかたちも清(きよ)げなりければ、あはれがりたまうて、うへに召(め)しあげたまふ。「そもそもまことか」など問はせたまふに、鳥飼といふ題を、みなみな人々によませたまひにけり。おほせたまふやう、「玉淵はいとらうありて、歌などよくよみき。この鳥飼といふ題をよくつかうまつりたらむにしたがひて、まことの子とはおもほさむ」とおほせたまひけり。
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〈juppo〉誰と会っても「暑いですね〜」抜きでは会話が始まらない、そんな季節がやってまいりました。必ず来るし、必ず終わる季節ですからね、しばしの我慢ですね。

 亭子の帝というのは、宇多天皇のことのようです。鳥飼院は、今の大阪あたりにあった離宮のことだそうです。「うかれめ」を遊女と訳しましたが、たいてい遊女と訳されるようですが、ここでの遊女は時代劇などに登場する春を売る遊女ではなく、歌ったり踊ったり、一緒に遊んでくれる女性たちのことで、まさに「遊ぶ女」なのですね。時代が下ると、売春もするようになったようですが。

 「大江の玉淵」という人の名が、当たり前のように語られていますが、代々平安時代の貴族で、有名な人だったんですね。このお話を読む限り、宇多天皇とも親交があったようで、懐かしさからその娘らしき遊女にも親しみを覚えて招き寄せています。「さまかたちも清げ」だったせいでもありそうですけどね。
 そういうわけで急遽、鳥飼院で鳥飼お題で歌を詠む会になりました。その歌は次回。全部で3回あります。

 しばらくは暑い毎日ですが、皆さん熱中症には気をつけてください。私はすでに軽く。毎年そんな感じです。
posted by juppo at 00:26| Comment(0) | 大和物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする