〈本文〉
項王、項伯東嚮坐、亜父南嚮坐ー亜父者、范増也、沛公北嚮坐、張良西嚮侍。范増数目項王、舉所佩玉玦以示之者三、項王黙然不応。范増起、出、召項荘、謂曰、「君王為人不忍、若入前為寿。寿畢、謂以剣舞、因撃沛公於坐、殺之。不者、若属皆且為所虜。」荘則入為寿。
〈書き下し文〉
項王、項伯東嚮(とうきやう)して坐(ざ)し、亜父(あほ)南嚮(なんきやう)して坐す。ー亜父とは范増なり、沛公北嚮(ほくきやう)して坐し、張良(ちやうりやう)西嚮(せいきやう)して侍(じ)す。范増数(しばしば)項王に目(もく)し、佩(お)ぶる所(ところ)の玉玦(ぎよくけつ)を舉(あ)げて、以(もつ)て示す者(こと)三たびす、項王黙然(もくぜん)として応ぜず。范増起(た)ち、出(い)でて項荘を召し、謂(い)ひて曰(い)はく、「君王(くんわう)人と為(な)り忍(しの)びず、若(なんぢ)入(い)り前(すす)みて寿(じゆ)を為せ。寿畢(を)はらば、剣を以て舞はんことを請(こ)ひ、因(よ)りて沛公を坐に撃(う)ちて、之(これ)を殺せ。不者(しからず)んば、若が属(ぞく)皆且(まさ)に虜(リヨ)とする所と為らんとす。」荘則(すなは)ち入りて寿を為す。

〈juppo〉もうすぐ6月だなと思うと「えー今年も半分終わっちゃうの?」という人がいますが、まだですから。6月が終わって初めて半分ですよ。とはいえ、物事の後半というのはなぜか前半よりギアを上げて進んでいく印象がありますから、体感的には今年もあと半分くらいかもしれません。
さて前回はなぜか宴会に突入したところで〈続く〉でした。座を囲んで飲めや歌えやになるのかと思いきや、陰謀渦巻く酒宴と化しています。范増は軍師だからか攻撃的です。沛公をなんとしても生かしては帰さない決意のようです。
范増の合図をおそらく分かっていながら応じない項王の真意は図りかねますが、いや分かっているのかどうかも私は知りませんが、とにかく痺れを切らした范増が一手を打ったところまでで次回に続きます。
果たして范増の一計は成功するのでしょうか。ご期待ください。