〈本文〉
項王曰、「沛公安在。」良曰、「聞大王有意督過之、脱身独去、已至軍矣。」項王則受璧、置之坐上。亜父受玉斗、置之地、抜剣撞而破之、曰、「唉。豎子不足与謀。奪項王天下者、必沛公也。吾属今為之虜矣。」沛公至軍、立誅殺曹無傷。
〈書き下し文〉
項王曰はく、「沛公安(いづ)国か在(あ)る。」と。良曰はく、「大王之(これ)を督過(とくくわ)するに意有りと聞き、身を脱して独(ひと)り去れり、已(すで)に軍に至らん。」と。項王則(すなは)ち璧を受け、之を坐上(ざじやう)に置く。亜父(あほ)玉斗を受け、之を地に置き、剣を抜き撞(つ)きて之を破りて曰はく、「唉(ああ)。豎子(じゆし)与(とも)に謀(はか)るに足らず。項王の天下を奪ふ者は、必ず沛公ならん。吾(わ)が属(ぞく)今に之が虜(りよ)とならん。」と。沛公軍に至り立ちどころに曹無傷(さうむしやう)を誅殺(ちゆうさつ)す。

〈juppo〉こんなに暑い毎日でも確実に秋は近づいているのですね。そしてまた寒くなるんですよね、どうせ。この前片付けたばっかりな気がするストーブをまた出して、ガス代が4倍に跳ね上がるんですね。
さて物語は佳境です。沛公さんはとっくに鴻門を去り、残った張良さんが代わりに贈り物を捧げています。これを受け取るなり叩き壊した亜父とは項王軍の軍師です。「豎子」は青二才とか未熟者という意味で、贈り物なんかで懐柔されるな、と項王を戒めているのでしょうね。
その頃、沛公さんは既に自軍に戻っており、そもそもこのお話の発端であった、項王に告げ口した曹無傷を殺しちゃうんですね。まぁ裏切り者ですからね。
味方に裏切られたり、敵を操ったり、権謀術数渦巻く戦国時代です。項王を戒めた亜父もその後、項王と袂を分かってしまうようです。ここではそこまで描きませんよ。
あとちょっとだけ、付け足しのような続きがあります。近日中に。