〈本文〉
やうやう夜も明けゆくに、見れば率て来し女もなし。足ずりをして泣けどもかひなし。
白玉かなにぞと人の問ひし時露と答へて消えなましものを
これは、ニ條の后のいとこの女御の御もとに、仕うまつるやうにてい給へりけるを、かたちのいとめでたくおはしければ、盗みて負ひていでたりけるを、御兄人(せうと)堀河の大臣(おとど)、太郎國經の大納言、まだ下らふにて内へまいり給ふに、いみじう泣く人あるをききつけて、とどめてとりかへし給うてけり。それをかく鬼とはいふなりけり。まだいと若うて、后のただにおはしける時とや。
〈juppo〉3コマ目から最後までの、ニ條の后の話は、後から付け足されたものなんだそうです。教科書にはこの部分は載っていなかったりします。私も蛇足だなーと思うのですが、一応『伊勢物語・第六段』としてはここまでなので、漫画にしました。「白玉か・・」の歌は、訳で読むより「消えなましものを」という文語の方が口惜しさが伝わってきて悲しいですよね。
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