続きです。
〈本文〉
御供(おとも)なる人、酒を持たせて野よりいで来たり。この酒を飲みてむとて、よき所を求め行くに、天(あま)の河といふ所に至りぬ。親王(みこ)に馬の頭(かみ)、大御酒(おおみき)まいる。親王ののたまひける、「交野(かたの)を狩りて、天の河のほとりに至るを題にて、歌よみて、杯はさせ。」とのたまうければ、かの馬の頭よみて奉りける。
狩り暮らしたなばたつめに宿借らむ天の河原にわれは来にけり
親王、歌をかへすがへす誦(ず)じたまうて、返しえしたまはず。紀有常御供につかうまつれり。それが返し、
一年(ひととせ)にひとたび来ます君待てば宿貸す人もあらじとぞ思ふ
〈juppo〉すっかり桜も散ってしまいましたが、まだ八重桜が咲いています。そろそろ夏服を出してもいい陽気になりました。それなのに花粉症が残っています。
惟喬親王ご一行は桜の木の下から、なんと天の河に移動しています。これは北河内郡のとある所の別名だそうで、実は川ではないのかな?と心許ながりつつ描きました。少なくとも、ミルキーウェイではないわけですが、七夕伝説は当時からポピュラーだったんですね。
紀有常は、業平の妻の父で、惟喬親王の母親の兄弟でもあるんです。えーと、ということは、二人のどちらから見ても叔父さんということで、親王と業平は、従兄弟同士になるんですねぇ。正確には、業平の妻が親王のいとこです。
この段は自然の中で飲みながら、ほのぼの歌を読むシーンが続きます。今回は、地名から織姫・彦星を連想して詠んだ二首が出てきました。そしてさりげなく、在原業平って人は歌の上手い人だったんだな〜、という内容になっているのでした。
2008年04月29日
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