2008年05月17日

浦戸での船出

土佐日記、続きです。

〈本文〉
 守の館の人々の中に、この来たる人々ぞ、心あるやうには、言はれほのめく。
 かく別れがたく言ひて、かの人々の、口網ももろもちにて、この海辺にて、になひ出だせる歌、

 惜しと思ふ人やとまると葦鴨のうち群れてこそ我は来にけれ

と言ひてありければ、いといたくめでて、行く人の詠めりける。

 棹(さを)差せど底ひも知らぬわたつみの深き心を君に見るかな

と言ふ間に、かぢ取りもののあはれも知らで、おのれし酒をくらひつれば、早く往(い)なむとて、「潮満ちぬ。風も吹きぬべし。」と騒げば、船に乗りなむとす。

urado.jpg
〈juppo〉いつだったか忘れてしまったくらい前に描いた『亡児の追憶』の続きなんです。
 前回の終わりの方で、お別れに駆け付けた皆さんとのお別れのシーンです。「この来たる人々」というのが、その駆け付けた人たちのことで、「同じ役人をやっていても、こういう時に来てくれる人とそうでない人がいるよね〜」てなことを口走ってしまってから、おっと心の声が外に出てしまったぞ、と口をつぐんでいるんですね。

 大勢でお見送りに来て、大勢で歌を詠んで送る、セレモニーとしては泣ける筋立てです。

 そんないいシーンなのに、所詮、船頭風情には理解してもらえなかったと。

 気の利かない船頭のおかげで、重い腰を上げて旅を続けることが出来た訳ですけど。


 いつの時代にもお別れに来る人と来ない人、KYな人はいたのだな、ということが良く分かるお話ですね。
posted by juppo at 21:41| Comment(0) | TrackBack(1) | 土佐日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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