〈本文〉女房どもも、みな御前のまびきにしたがひて、さしいづる人もなかりければ、せんかたなくて、車よせの妻戸をおしあけて、ひとりながめいたるに、更闌(たけ)、夜しづかにて、月の光風の音、物ごとに身にしみわたりて、人のうらめしさも、とりそへておぼえけるままに、心をすまして、篳篥(ひちりき)をとりいでて、時のねにとりすまして、
ませのうちなるしら菊も うつろふみるこそあはれなれ
我らがかよひてみし人も かくしつつこそ枯(かれ)にしか
と、くり返しうたひけるを、北の方ききて、こころはやなをりにけり。それよりことになからひめでたくなりにけるとかや。優(いう)なる北の方の心なるべし。

〈juppo〉めでたく、元鞘におさまった敦兼夫妻であります。終わり良ければすべて良し、ってことですね。
結末は北の方の心が風流だったとかなんとか、奥さんの懐の深さみたいなところを持ち上げていますが、立派だったのはやはり旦那の敦兼さんの方ですよねぇ。
何しろ篳篥を吹きながら歌を歌うなんて一芸にも秀でている訳ですし。
その篳篥(ひちりき)というのは雅楽で奏される縦笛のことです。笛ですから、歌うと同時には吹けないと思います。
更闌なんて難しい言葉も出てきましたが、闌という漢字には「たけなわ」という意味と読みがあるのですね。夜もたけなわ、ってことで、「夜もふけて」の意味になるんです。
男の魅力は顔じゃないんだあー!というのがこの章のテーマであるかと思います。
古今東西、美醜をテーマにした物語は数ありますが、必ずついてくるのは「でも心の美しさにはかなわない」てな、道徳的な結末ですよね。
顔がイイとか悪いとかなんて、極めて主観的な感想だし、自分が良いと思ったものを、自信を持って好きになったならそれ以上何の問題もないはずですよね。
自分の容姿についても、そうだと思います。きれいになりたいとか、痩せたいというのは人類の永遠のテーマみたいになっていますが、「今の自分が大好き」キャンペーンが大々的に巻き起こったら美容業界が崩壊するので、無理に煽っているだけの話だと思います。
皆さんも自信を持って、もっと自分を大好きになってください!
ところで、実は漫画の中の「垣根」という漢字が間違っていたので、細かいツッコミが入る前にこっそり直しました。
修正前に発見していた方、お恥ずかしいところをお見せして恐縮です。
他に恥ずかしいミスを見つけた方は遠慮なさらず、どんどん突っ込んでくださいね〜。
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えッ!!?結局北の方が!!?
なんだかちょっぴり腑に落ちませんが(¨;)アハハ
ちょっと、腑に落ちないですよねー(・・?)
まぁ敦兼さんの良さにやっと気づいたとは出来た女だ、というほどのオチなのかと。