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また、人、
「すべて、余(あま)りになりぬる人の、そのままにてはべるためし、ありがたきわざにこそあめれ。
桧垣(ひがき)の子、清少納言は、一条院の位の御時、中関白(なかのくわんぱく)世を治(し)らせたまひけるはじめ、皇太后宮(くわうたいごうぐう)の時めかせたまふ盛りにさぶらひたまひて、人より優なる者とおぼしめされたりけるほどのことどもは、『枕草子』といふものに、みづから書きあらはしてはべれば、こまかに申すに及ばず。
歌詠みの方(かた)こそ、元輔(もとすけ)が娘にて、さばかりなりけるほどよりは、すぐれざりけるとかやとおぼゆる。『後拾遺(ごしふゐ)』などにも、むげに少なう入(い)りてはべるめり。みづからも思ひ知りて、申し請ひて、さやうのことには交じりはべらざりけるにや。さらでは、いといみじかりけるものにこそあめれ。
その『枕草子』こそ、心のほど見えて、いとをかしうはべれ。
いよいよ今月いっぱいで塾で借りていた部屋を引き払います。閉鎖を決めてから少しずつ荷物を片付けてはいましたが、やはり今月に入ってからが大詰めで、来る日も来る日も本を運び出していたら腰を痛めてしまい、一週間何も出来ない期間を経て、やっと何とかなりそうな手応えを感じているあと一週間です。
腰痛は寒さのせいもあったようで、話してみると周りにも痛みを抱えている人は結構いました。二月は腰痛月間でもあるんですね。
そんなドタバタ生活でブログはすっかり放置でしたが、実は腰が痛くて何も出来ない日々に着々とこの作品に取り掛かっていました。続けて更新します。3回くらい。
『無名草子』は以前「小野小町」をご紹介しました。ドクロの話でしたね〜。
今回のお話は、あのドクロの話の次に語られているエピソードなんです。冒頭で「余りになりぬる人のそのままにて」と言っているのはその「小野小町」からの、栄枯盛衰ネタつながりのフリなんですね。
「桧垣」は清少納言のお母さんらしいという遊女の名前です。由緒正しい家柄ではなかったようだとか、お父さんの清原元輔が歌人だったにしては歌の才能はなかったんじゃないかとか、なかなか辛口の人物評になっていますね。
続きは結構すぐに!