2012年07月14日

貝合せD

お待たせしております。続きです。
〈本文〉
すべて残る隈(くま)なくいみじげなるを、『いかにせさせ給はむずらむ。』と、道のままも思ひまうで来つる。」
とて、顔もつと赤くなりて言ひ居たるに、いとど姫君も心細くなりて、
「なかなかなる事を言ひ始めてけるかな。いとかくは思はざりしを。ことごとしくこそ求め給ひぬれ。」
と宣ふに、
「などか求め給ふまじき。上は、内大臣殿のうへの御許(おんもと)までぞ、請(こ)ひ奉り給ふとこそは言ひしか。これにつけても、「、あはれ、かくは。」
とて、涙もおとしつべき気色ども、をかしと見る程に、このありつる童、
「東(ひんがし)の御方(おんかた)渡らせ給ふ。それ隠させ給へ。」
と言へば、塗り籠めたるところに、皆取り置きつれば、つれなくて居たるに、初めの君よりは、少しおとなびてやと見ゆる人、山吹(やまぶき)・紅梅(こうばい)・薄朽葉(うすくちば)、あはひよからず着ふくだみて、
kai5.jpg
〈juppo〉暑いですね。何しろ暑いです。散々お待たせしてしまった言い訳に暑さを強調しようとしているところです。
 暑いといってもまだ梅雨です。梅雨が明けたらもっと暑くなることはわかっているんですけど、梅雨に生まれた割りに梅雨の蒸し暑さには滅法弱い私です。

 さて、5回目にしてついに「あちらの姫君」登場です。

 ここまでに詳しい説明はありませんが、こちらの姫君とあちらの姫君は、どうやらお父さんが同じでお母さんが違う人という、いわゆる腹違いの姉妹らしいです。
 
 そして弟君が「母のおはせましかば」と言っているのは、既にこの姉弟のお母さんは亡くなっているので、たかが貝合せをするのにも、親のない境遇を歎かずにいられないほど不利な立場だ、という訳なんですね。

 味方が少ないから貝がたくさん集まらないよ、てだけなんですけど、こんな子供の遊びでも、身分とか後ろだてだとかの違いに大きく左右されるのが平安貴族の世界なんでしょうね。まぁいろいろ大変で大騒ぎしてるので、少将もまだしばらく退屈しないで覗き見を続けるみたいですね。

そんな訳で、まだまだ続きます。

posted by juppo at 00:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 堤中納言物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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