おはようございます。珍しく早朝の更新です。リクエストにお応えしています。
〈本文〉
女院(にようゐん)は、入道殿をとりわき奉らせ給ひて、いみじう思ひ申させ給へりしかば、帥殿(そちどの)はうとうとしくもてなさせ給へりけり。帝、皇后ノ宮をねんごろにときめかさせ給ふゆかりに、帥殿はあけくれ御前にさぶらはせ給ひて、入道殿をばさらにも申さず、女院をもよからず、ことにふれて申させ給ふを、おのづから心得やせさせ給ひけむ、いと本意(ほい)なきことにおぼしめしける、ことわりなりな。入道殿の世をしらせ給はむことを、帝いみじうしぶらせ給ひけり。皇后ノ宮、父おとどおはしまさで、世の中をひきかはらせ給はむことを、いと心ぐるしうおぼしめして、粟田殿にもとみにやは宣旨(せんじ)くださせ給ひし。されど、女院の道理のままの御事をおぼしめし、また帥殿をばよからず思ひ聞こえさせ給うければ、入道殿の御事をいみじうしぶらせ給ひけれど、「いかでかくはおぼしめし仰せらるるぞ。大臣超えられたることだに、いといとほしく侍りしに、父おとどのあながちにし侍りしことなれば、いなびさせ給はずなりにしにこそ侍れ。粟田のおとどにはせさせ給ひて、これにしも侍らざらむは、いとほしさよりも、御ためなむいと便(びん)なく世の人もいひなし侍らむ」など、いみじう奏せさせ給ひければ、むづかしうやおぼしめしけむ、後にはわたらせ給はざりけり。
〈juppo〉相変わらず人物関係がややこしいので、相関図を入れておきます。
『関白の宣旨』でリクエストをいただきましたが、手元にある訳本にはそういう章がなく、この「道長と東三条女院」と「宣旨くだりぬ」という2タイトルで、道長の宣旨について述べられているようなので、その2編を描くことにしようと思います。
そういう訳で、まだ宣旨はくだっておりません。宣旨というのは人事の辞令みたいなもののようです。ここでは粟田殿や道長を関白にする命令のことですね。
女院の詮子は実は出家しているので女院という称号がついています。その女院は道長の姉で帥殿の叔母、ということになりますが、断然道長びいきのようで、早く宣旨をくだせ、と息子の帝をせっついているところで終了です。
続きにあたる「宣旨くだりぬ」は近日中に。テストに間に合ったでしょうか。
2013年12月09日
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