続きです。
〈本文〉
清げなる大人(おとな)二人ばかり、さては童(わらは)べぞいで入(い)り遊ぶ。中に、十(とを)ばかりにやあらむと見えて、白き衣(きぬ)、山吹(やまぶき)などのなれたる着て、走り来たる女子(をんなご)、あまた見えつる子どもに似るべうもあらず、いみじくおひ先見えて、美しげなるかたちなり。髪は扇(あふぎ)を広げたるやうにゆらゆらとして、顔はいと赤くすりなして立てり。「何事ぞや。童べと腹だちたまへるか。」とて、尼君の見上げたるに、少しおぼえたるところあれば、子なめりと見たまふ。「雀(すずめ)の子を犬君(いぬき)が逃がしつる。伏籠(ふせご)の内にこめたりつるものを。」とて、いとくちをしと思へり。この、ゐたる大人、「例の心なしの、かかるわざをして、さいなまるるこそいと心づきなけれ。
〈juppo〉さて、皆様お待ちかねの紫の上の登場です。あんまり可愛く描けなくてすみません。登場早々、おかんむりなので。
雀の子を犬君が逃がしてしまったということなんですが、この部分、最初に読むと、犬が逃がしたの?と思ったりしますよね。犬君というのはここには登場してないんですけど、若紫の遊び相手の子なんですって。「伏籠のうちにこめたりつるものを」という言い方には本当に残念というか、恨みがましい感情がこもっているように感じますね。
この場面、ただ源氏が幼い紫の上を見初めてしまうというだけのシーンなので、ここではその後どうしたということもないのですが、もう少し続きます。
2014年10月04日
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