大変長らくお待たせいたしました。続きです。
〈本文〉判官もさきに心得て、おもてに立つやうにはしけれども、とかく違ひて能登殿には組まれず。されどもいかがしたりけん、判官の船に乗り当たつて、あはやと目をかけて飛んでかかるに、判官かなはじとや思はれけん、長刀脇(わき)にかいばさみ、味方の船の二丈ばかり退(の)いたりけるに、ゆらりと飛び乗りたまひぬ。
能登殿は、早業(はやわざ)や劣られたりけん、やがて続いても飛びたまはず。今はかうと思はれければ、太刀長刀海へ投げ入れ、甲も脱いで捨てられけり。鎧の草摺(くさずり)かなぐり捨て、銅ばかり着て、おほわらはになり、大手(おおで)を広げて立たれたり。およそあたりを払つてぞ見えたりける。
恐ろしなんどもおろかなり。能登殿大音声(だいおんじよう)をあげて、「われと思はん者どもは、寄つて教経に組んでいけどりにせよ。鎌倉へ下つて、頼朝(よりとも)に会うて、もの一言(ひとこと)言はんと思ふぞ。寄れや、寄れ。」とのたまへども、寄る者一人(いちにん)もなかりけり。
〈juppo〉3月になりましたが、なかなか能登殿の最期の最後にたどり着きませんね。人生の残り時間はどんどん少なくなるのに、何をやるにも時間がかかるようになってくるのが年を取るということなのだなぁ〜、なんてただ思っています。そんな中、今回の漫画を描きながら仕上げる直前になって、突然編み物を始めたら止まらなくなってしまいました。
「草摺」というのは、ヨロイの下に垂れたスカートみたいな部分のことだそうです。どうしてそこまで脱ぎ捨てたのか不明ですが、やっぱりびらびら着いてると動きにくいんですかね。
「おほわらわ」は「大童」と書きます。今でも「引っ越しの準備で大わらわですよ。」なんて言いますが、大童は大きな童(こども)という意味なんですね。
武士の髷がほどけてざんばら髪になった様子が、髷を結わない子どもみたいだから、そういう形容をしたんですね。そんな姿になって戦っている奮闘ぶりが、今の大わらわの意味である、大変忙しくてんてこまいな状況を表す言葉に残ったんでしょうね。武士はカブトをかぶる時は髷を結わないので、カブトを脱ぐとざんばら髪になってしまうんですって。
「おろかなり」は愚かだとかバカみたい、というより「〜と言うのも愚かだ」というような意味で、そう言うだけでは不十分なほど、ということになるそうです。
探しても追っても相対せない義経との対決をさっさと諦めた能登殿のようです。
描いていて、キレて怒鳴りまくるエガちゃんを連想しました。何しろ「一言もの申〜す!!」ですからね。
着々とその最期に近づく能登殿の最期はまた次回・・・くらいに。続きます。
ところで、先日母と水戸の偕楽園に行ってきました。偕楽園では3月末まで梅まつり開催中です。先週はまだ七部咲きでしたが、黄門様にお会いして記念写真撮ってきました。
2016年03月11日
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リクエストなのですが、古今著聞集の「能は歌詠み」の漫画を描いていただけないでしょうか?
コメント&リクエスト、ありがとうございます!
リクエストいただいた作品は、なるべく作品化するようにしていますが、年々作業が遅くなり、思いの外お待たせしてしまうこともあります。
でも前向きに検討します〜(>_<)
お待ちくださいね。
どうぞよろしくお願いいたします。
コメントありがとうございます。
はい、ブログの漫画は授業でお使いいただいて構いません。
生徒さんたちが古文に親しむお手伝いが出来れば幸いです。
教師をしている者ですが、何か生徒にとって分かりやすい資料がないかなぁと探してここにたどり着きました。
とてもわかりやすく可愛らしい漫画なので、是非授業で活用させていただきたいです。
これをプリントにして生徒に配るっていうのは、やってもいいのでしょうか…?
こんにちは。コメントありがとうございます。
はい、そういうことはやってもいいですよ。
生徒さんたちに楽しく学習してもらえたら嬉しいです。