2017年03月05日

扇の的B

お待たせしました。続きです。
〈本文〉
与一畏(かしこま)って申けるは、「射(ゐ)おほせ候はむ事不定(ふぢやう)に候。射損じ候なば、ながきみかたの御きずにて候べし。一定(いちぢやう)つかまつらんずる仁に仰(おほせ)付(つけ)らるべうや候らん」と申(まうす)。判官大にいかって、「鎌倉をたって西国へおもむかん殿原(とのばら)は、義経が命(めい)をそむくべからず。すこしも子細を存ぜん人は、とうとう是より帰らるべし」とぞの給ひける。与一、重ねて辞せばあしかりなんとや思(おもひ)けん、「はづれんは知り候はず。御定(ごぢやう)で候へば、つかまってこそみ候はめ」とて、御まへを罷立(まかりたつ)。黒き馬のふとうたくましゐに、小ぶさの鞦(しりがい)かけ、まろぼやすったる鞍置いてぞ乗ったりける。弓とりなをし、手綱かいくり、右はへむひてあゆませければ、みかたの兵(つはもの)共、うしろをはるかに見をくって、「このわかもの、一定つかまつり候ぬと覚(おぼえ)候
」と申ければ、判官もたのもしげにぞ見給ひける。
 矢ごろすこしとをかりければ、海へ一段ばかりうちいれたれども、猶(なほ)扇のあはひ七段ばかりはあるらむとこそ見えたりけれ。
ougi3.jpeg
〈juppo〉与一くんに少し動きが出てきて、ちょっとオリジナルと違う絵になってきています。ゆるキャラとしての与一くんはいつもにこやかな表情なんですが、義経の命令を聞きがならニコニコしているワケにもいかないので、それなりの顔つきになっていただきました。

 ここまでが、中学国語の教科書では解説で済まされている部分です。この次が、いよいよ与一の華麗なる弓の腕が披露される場面です。一刻も早くご披露したいと思っていますよ!

 一段(たん)、七段と、また距離を表す語が出てきています。ここでも、一段≒11メートルを採用しました。約によっては、微妙に差があって、一段=10メートル、七段=70メートルになっているのもあるようですが、まぁだいたいそのくらい、で読んでいただければどちらでも良いのかと思います。
 今回、一番アタマを悩ませたのは、与一の乗る馬の鞍です。「まろぼやすったる」の「まろぼや」は丸い「ほや」のことで、「ほや」が「やどり木」のことなんだそうです。やどり木を丸く図案化した文様がついた鞍、のようです。それは一体どんな鞍?と行き詰まっていろいろ調べましたが、結局よくわかりませんでした。西洋にもヤドリギの図案というのは結構ある、家紋にやどり木をモチーフにしたものもある、などの知識は増えたものの、鞍の全体像は分からないまま、結果的に意図せずして鞍はそれほど見えないアングルの絵になってしまいました。一応、鞍につけた模様はやどり木の家紋とかいうものを参考にしているんですけど、小さくてハッキリしないですね。

 次回、ついに扇の的を狙う与一くんの活躍をお楽しみに。
posted by juppo at 05:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 平家物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック