〈本文〉
ころは二月十八日の酉刻(とりのこく)ばかりのことなるに、をりふし北風激しくて、磯打つ波も高かりけり。舟は、揺り上げ揺りすゑ漂へば、扇もくしに定まらずひらめいたり。沖には平家、舟を一面に並べて見物す。陸(くが)には源氏、くつばみを並べてこれを見る。いづれもいづれも晴れならずといふことぞなき。与一目をふさいで、「南無(なむ)八幡大菩薩、我が国の神明(しんめい)、日光権現(につくわうのごんげん)・宇都宮・那須の湯泉大明神、願はくは、あの扇の真ん中射させてたばせたまへ。これを射損ずるものならば、弓切り折り自害して、人に二度面(おもて)を向かふべからず。いま一度本国へ迎編とおぼしめさば、この矢はづさせたまふな。」と心のうちに祈念して、目を見開いたれば、風も少し吹き弱り、扇も射よげにぞなつたりける。
〈juppo〉普通「扇の的」と言えば、ここからですよね。今回と次回の2回で、その部分をお届けします。
ここに来て唐突に、1コマ目のように海が荒れていることが発覚しました。今までそんな風に海を描いておりませんでしたが、現場にいたらこんな感じだったかもと想像していただければ幸いです。
要するに、波が高くて扇の的は揺れて定まらないし、北風はここでは与一にとって向かい風だとかで、だいぶ不利な条件が整っちゃったな、ということなんですね。
しかしながら、6コマ目では風も少し収まったようです。神様への祈りが通じたのでしょうか。
与一が祈る神々がずらずら並ぶので、途中で「以下略」にでもしてしまおうかなんて暴挙に走りそうになりましたが、日光、宇都宮、那須、と与一にとって地元の親しみあるはずの神様を省略できないので原文通り祈ってもらいました。最初の「南無八幡大菩薩」の南無は信仰します、という意味で、八幡大菩薩は軍神として武士の皆さんの崇敬があった神様だそうです。
今回はほぼ与一くんの一人舞台になりました。描けば描くほど、可愛いですね〜与一くん。
次回はついに最終回です!
ところで先月、母と、幼なじみの母娘と、奄美大島へ行って来ました。
偶然にも3回に亘って放送された「ブラタモリ」とのコラボ旅行になりましたが、全くの偶然で、旅したばかりのあそこやあそこがまたテレビで見られたのは嬉しかったです。
現地の方は口をそろえて「海と山しかない」と言うのですが、本当にそうでした。それがイイんですよ。イイとこでしたよ〜。
タモさんも登った高知山展望所。
ホノホシ海岸。海。そして山。