2019年01月16日

忠度の都落ちB

続きです。
〈本文〉
「かかる忘れ形見を賜はり起き候ひぬる上は、ゆめゆめ粗略を存ずまじう候。御疑ひあるべからず。さてもただ今の御渡りこそ、情けもすぐれて深う、あはれもことに思ひ知られて、感涙押へがたう候へ。」とのたまへば、薩摩の守喜びて、「今は西海(さいかい)の波の底に沈まば沈め、山野にかばねをさらさばさらせ、浮き世に思ひおくこと候はず。さらばいとま申して。」とて、馬にうち乗り甲(かぶと)の緒を締め、西をさいてぞ歩ませたまふ。三位後ろをはるかに見送つて立たれたれば、忠度の声とおぼしくて、「前途(せんど)ほど遠し、思ひを雁山(がんさん)の夕べの雲に馳(は)す。」と、高らかに口ずさみたまへば、俊成の卿いとど名残(なごり)惜しうおぼえて、涙を押へてぞ入りたまふ。
tadanori3.jpeg
〈juppo〉週末にこの回をブログに上げようと思っていたのですが、レギンスの伸びたゴムを付け替えたり、綻びたレギンスを繕ったりしてるうちに日曜日が終わってしまいました。どんだけレギンスを履き古しているのか、という週末でした。はい、私はレギンスのゴムが伸びたり多少古びたからといって捨てないで履き続けるのであります。伝線したストッキングは短く切って拭き掃除に使っています。

 無事に巻物を手渡したので安心して再び都落ちするらしい忠度さんですね。おいとまする際に「甲の緒を締め」とあったのでここからカブトを被ってもらいました。それまでカブトじゃなかったのは何故なのか、うっかり忘れそうになりましたが大した意味はありません。この場面を描いた平家物語の絵で、忠度さんは烏帽子姿だったからです。
 この時、忠度さんは40歳、俊成さんは70歳、だったようなので、俊成さんはグレーな髪にしておきました。

 「前途ほど遠し・・」は詩吟なんですね。「忠度の声とおぼしくて」とあるので、はっきり忠度さんが吟じたとはわからないような描写です。俊成さんの脳内に響いていたのでは。もともと、『和漢朗詠集』とかいうのにある詩の一つが元になっているようですし、これもそれも旅立つ人に向けた別れを詠んでるんですよね。「君の〜ゆく〜道は〜果てし〜なく〜遠い〜」みたいな感じです。

 ここでこのお話は終わっているように見えますが、もう1回あります。もちろん近日中に!
posted by juppo at 00:43| Comment(0) | 平家物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がない ブログに表示されております。