〈本文〉
何心なく御前(おまへ)にもて参りて、「袋などあぐるだにあやしくおもたきかな」とて、ひきあけたれば、蛇(くちなは)首をもたげたり。人々心をまどはしてののしるに、君はいとのどかにて、「なもあみだ仏、なもあみだ仏」とて、「生前のおやならむ。な騒ぎそ」とうちわななかし、顔ほかやうに、「なまめかしきうちしも、けちえんに思はむぞ、あやしき心なるや」と、うちつぶやきて、近くひきよせ給ふも、さすがに恐ろしくおぼえ給ひければ、立ち処(どころ)居(ゐ)処、蝶(てふ)のごとく、せみ声にのたまふ声の、いみじうをかしければ、人々にげさわぎて笑ひいれば、しかじかと聞こゆ。「いとあさましくむくつけき事をも聞くわざかな。さるもののあるを見る見る、みな立ちぬらむことぞあやしきや」とて、

〈juppo〉京都タワーには登りませんでしたが、京都タワーの地下にあるお風呂屋さんには行きました。清水寺は修復中でした。
さて、前回仕込んだ蛇のおもちゃ入り袋は、やっぱりこういう使用法だったのですね。他に考えられませんね。面白いのは、それくらい何てことないのでは?というキャラの姫が、結構まんまと怖がってくれていることです。虫は大丈夫でも蛇はダメなんですね。
その、怖がってあたふたする姫の様子が、「蝶のごとく」とか「せみ声」とか虫を使って言い表しているのも面白いですね。侍女たちはその様子が滑稽だと笑い転げていますが、急に女の子らしい一面を見せる姫が、ちょっと可愛いですよね。
一連の出来事をしかじかと姫の父に伝えたのは誰だかよくわからないのですが、笑い転げている侍女たちが自分で伝えたわけではないようなので、他の誰かと同じキャラにならない絵にしてあります。ただの伝令役なのであまり気にしないでください。
今回、全文を訳してから一話ずつ漫画にしてるんですけど、あまり時間をかけて描いているせいで、この続きがどんな話だったかすっかり忘れています。
次回もお楽しみに、と言いながら私も楽しみです。
また1週間後くらいに!