2019年06月11日

虫愛づる姫君F

前回の漫画にミスがあることに気づきました。お詫びは後ほど。続きです。
〈本文〉
大殿(おとど)太刀(たち)をひきさげてもてはしりたり。よく見給へば、いみじうよく似せて作り給へりければ、手に取り持ちて、「いみじう物よくしけるひとかな」とて、「かしこがりほめ給ふと聞きてしたるなめり。かへりごとをして、はやくやり給ひてよ」とて、渡り給ひぬ。
 人々、つくりたると聞きて、「けしからぬわざしける人かな」と言ひにくみ、「かへりごとせずはおぼつかなかりなむ」とて、いとこはくすくやかなる紙に書き給ふ。かなはまだ書き給はざりければ、片かんなに、
 ちぎりあらば よき極楽にゆきあはむ
  まつはれにくし 虫のすがたは
「福地(ふくち)の園(その)に」とある。むまのすけ見給ひて、「いとめづらかに、さま異(こと)なる文(ふみ)かな」と思ひて、「いかで見てしがな」と思ひて、中将といひ合はせて、
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〈juppo〉毎日よく雨が降りますが、そういえば梅雨入りしたんでしたね。梅雨にしては寒すぎて、季節がよくわからなくなりますね。
 
 蛇のおもちゃを仕掛けたアイツの名前が明らかになりました。「むまのすけ」とありますが、漫画にあるように「右馬の助」と書いて「うまのすけ」と読み、右馬寮の次官だそうです。右馬寮は「うめりょう」と読んだりもするようです。左馬寮もあって、馬寮というのがお役人や貴族の乗る馬を飼育したり管理したりする部署のことなんですね。
 うまのすけというと「マカロニほうれん荘」を思い出す私です。そのせいではないと思いますが、4コマ目の侍女たちの会話がなんだか「たまりませんわん!」になってしまっています。
 
 さて、ようやく名前もはっきりした右馬の助ですが、姫と手紙をやりとりして初めて「会いたいものだ」と思っているので、実はまだこの時点で姫に会っていません。すみません。お詫びはここです。前回、蛇入り袋を持ってきた人物がこの人だと思って描いていましたが、袋は届けられただけで本人持参ではなかったようです。近いうちに訂正原稿に差し替えたいので、お待ちください。訂正後にお読みになった方には何のことやら、な説明になっていると思います。

 父に促されて手紙の返事を書く姫、紙の選び方から字の書き方まで個性出まくりのようです。まず上等な薄い紙ではなく硬い紙に、平仮名で書くのが普通なのにカタカナで!という書き方なんですね。当時は平仮名を女文字と呼んで、年ごろの女性はそれで書くのが普通だったそうですが、何しろこの姫に「普通」は通用しないんでしたね。「普通だったら何よ」みたいに堂々とできるのはカッコいいですけどね。

 突然登場した「中将」は近衛府の次官か何かだそうで、要するに右馬の助の友人です。二人で相談するのは、もちろん姫へのアタック大作戦、てことですね。
 その辺は次回に乞うご期待。前回の訂正もそのころまでには。
posted by juppo at 02:27| Comment(0) | 堤中納言物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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