2019年06月18日

虫愛づる姫君G

前々回のミスは修正しました。続きです。
〈本文〉
あやしき女どものすがたをつくりて、按察使(あぜち)の大納言の出(い)で給へるほどにおはして、姫君の住み給ふ方の北面(きたおもて)の立蔀(たてじとみ)のもとにて見給へば、男(を)のわらはの異なる事なき、草木どもにたたずみありきて、さて言ふやうは、「この木にすべていくらもありくは。いとをかしきものかな」と、「これ御覧ぜよ」とて、簾(すだれ)をひきあげて、「いとおもしろきかはむしこそ候へ」といへば、さかしき声にて、「いと興ある事かな。こち持てこ」とのたまへば、「取りわかつべくも侍らず。ただここもとにて御覧ぜよ」といへば、あららかに踏みて出づ。簾を押し張りて、枝を見はり給ふを見れば、頭へきぬ着あげて、髪もさがりばきよげにはあれど、けづりつくろはねばにや、しぶげに見ゆるを、眉いと黒く、はなばなとあざやかに、涼しげに見えたり。口つきも愛敬(あいぎやう)づきてきよげなれど、歯ぐろめつけねば、いと世(よ)づかず。
mushimedu8.jpeg
〈juppo〉今年に入ってLINEスタンプを作成していた間に、Macのお絵かきソフトを少し使いこなせるようになりました。おかげで前々回の原稿の修正もPC上で片付けられたんですけど、何度もやり直す必要が生じたりして、丸々描き直した方が早かったくらいでした。まだまだです。

 さて前回、中将と何やら相談することにした右馬の助でしたが、まさか女装する結論に達したとは。この人の行動にはいちいち意表を突かれますね。そしてこの時代、こうして隠れて女を覗き見するのがデフォだったんでしょうか。いつも誰か覗いてますよねぇ。
 女装という手段に走ったのには、前回作り物の蛇が相当巧みに作られていたのが一応伏線になっていて、女装もかなり巧みに装っているんだろう、ということらしいですよ。そんなことに才能を発揮しなくても・・という気もしないでもないです。
 
 姫の見た目については前にも説明があったので同じことのくり返しのようですが、右馬の助にとっては初めて見る姫の容姿なので改めて詳しく語られているんですね。男性の審美眼で見ているので、個人の感想的な説明になっています。
 「頭へきぬ着あげて」とあるので、着物を被ったような着方なんだと思いますけど、毛先が見えるほど髪が外に出ている状態でその着方に描くことができませんでした。ずっと着物を被っている姫を描き続けるのもどうかとも思ったり。
 「いと世づかず」には「色気がない」とする訳もありましたが、「世」と言っているので「世間並みでない」という意味の方を採用しました。

 次回も覗き続ける男たちにご期待ください。
posted by juppo at 03:56| Comment(0) | 堤中納言物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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