今月から忙しくなりました。姫君のお話はあと2回です。
〈本文〉
たけだちよきほどに。髪も袿ばかりにて、いと多(おほ)かり。裾(すそ)もそがねば、ふさやかならねど、ととのほりて、なかなかうつくしげなり。「かくまであらぬも、世の常、ひとざまけはひもてつけぬるは、口惜(くちを)しうやはある。まことにうとましかるべきさまなれど、いと清げに気高う、わづらはしきけぞ異なるべき。あな口惜し。などかいとむくつけき心なるらむ。かばかりなるさまを」と思す。
むまのすけ、「ただ帰らむはいとさうざうし。見けりとだに知らせむ」とて、畳紙(たたうがみ)い草の汁して、
かはむしの けぶかきさまを見つるより
とりもちてのみ まもるべきかな
とて、扇(あふぎ)してうちたたき給へば、わらはべ出で来たり。「これ奉れ」とて取らすれば、たいふの君といふ人、「この、かしこに立ち給へる人の、御前に奉れとて」といへば、
〈juppo〉このお話が始まったころは、ほとんど失業状態でヒマを持て余していた私ですが、今月から久しぶりに日本語を教えに出かけたりイラストを描いたりしています。朝の8時ごろにたまプラーザにいたりします。にわかに忙しくなりましたが、「虫愛づる姫君」はもう最後まで描いてあるので、順調に来週には完結します。
今回は右馬の助のほぼ一人芝居です。姫をつくづく観察して、キレイだけど変わってるとか、変わってるけど美しいし他とは違うのだとか、結局そんな虫好きな趣味であるのが残念なようですよね。そのままの姫を受け入れたいけどやはり常識にとらわれる自分との葛藤、ですね。
ともかく、手紙くらいは残して帰ろうというところで最終回に続く、です。確かにこのままただ帰るのは読者にとっても物足りませんね。
畳紙は畳んで懐に入れておく紙で、鼻をかんだりメモったりに使うようです。平安人は唐突に歌を詠む人たちなので、こんな風に思わず一首詠んでしまった時に、懐から出して書いたんですね。墨は持っていなかったようで、草の汁で書きました。風流ですねぇ。
そんなわけで、いよいよ来週は最終回をお届けしますよ〜。もう描いてあるけど一週間後までお見せしませんよ〜。
2019年07月08日
この記事へのコメント
コメントを書く