〈本文〉
さて後(のち)ほど経(へ)て、心から思ひ乱るる事ありて、里にあるころ、めでたき紙、二十を包みて給はせたり。仰(おほ)せ言(ごと)には、「とくまゐれ」などのたまはせて、「これは聞(きこ)しめしおきたる事のありしかばなむ。わろかめれば、寿命経(ずみやうきやう)もえ書くまじげにこそ」と仰せられたる、いみじうをかし。思ひ忘れたりつる事をおぼしおかせたまへりけるは、なほただ人にてだにをかしかべかし。まいて、おろかなるべき事にぞあらぬや。心も乱れて、啓(けい)すべきかたもなければ、ただ、
「かけまくもかしこきかみのしるしには
鶴の齢(よはひ)となりぬべきかな
あまりにやと啓せさせたまへ」とて、まゐらせつ。台盤所(だいばんどころ)の雑仕(ざふし)ぞ御使(つかひ)には来たる。青き綾(あや)の単衣(ひとへ)取らせなどして。
まことに、この紙を草子(さうし)に作りなどもてさわぐに、むつかしき事もまぎるる心地して、をかしと心のうちにもおぼゆ。

〈juppo〉前回、テレビのことで頭がいっぱいで言い忘れましたが、この作品を描く前に疫病を扱った作品を描こうかな、と探していました。こんな状況ですので。先人たちが流行病とどう向き合っていたか、何か得るものがあるのではないかと思って。いろいろ探したんですけど適当なものが見つからず、見送りました。こういうのがあるよ、とお知恵をお持ちの方はリクエストください。
さて、前回は中宮様の御前にいらした清少納言さん、今回はなにやら思い悩むことがあったとかで里に引きこもっておいでです。何があったんでしょうか。ここでは悩みのもとは明らかになりません。
相思相愛の中宮様からは贈り物攻撃です。前回、紙がどうの畳がどうのとかなりマニアックなこだわりを発表していたので、気に入りそうな贈答品を選ぶのもたやすいですよね。
「寿命経」というのはお経の中でも延命を祈願する経文だそうです。これも前回、清少納言さんが良い紙を手に入れたら生きていけそう、なんて言ってたので、中宮様は謙遜気味に「良い紙じゃないから書けないかも」と言ってるんですね。
「台盤所」は女官たちの控室、「雑仕」は下級の女官のことです。配達に来ただけのお手伝いにお礼の品をあげてしまうほど、清少納言さんの気持ちはだいぶ高まっているようです。悩んでいる時や落ち込んだ時は、このように好きなものに囲まれるに限りますね。そういう時は少し贅沢をしても、自分を慰めるために、好きなものを皆さんも用意しましょう。
ところで無事に繋がった新しいテレビですが、実は以前通りに繋がってないところがまだあります。その部分は急を要さないのでまあいいとして、問題は古いテレビの処分です。新しいテレビを買った家電屋で修理ができるかどうか聞いたら、もう無理だろうとのこと。ではどこかで引き取ってもらおうと思ったら、思い出しましたが「家電リサイクル法」とかいうのが出来てテレビはおいそれと捨てられないのですね。地元町田市の処理場では処分できず、不用品を引き取るお店などでも5000円かかるというんです。そのテレビを買った店に持っていくか、郵便局で「家電リサイクル券」を購入して隣の市の引取り所に運ぶしかないようです。10年以上前に、亡き父がこのテレビをどこで買ったか私にはわかりません。知っていたとしても保証書でもなければ買ったことを証明できない。保証書を探すか、郵便局に行くかの2択です。そうこうしている間、古いテレビがどこにあるかというと、車に積んであるのです。家に置いておくと邪魔なので。車の中でも邪魔なんですけど。早く処分したい。