〈本文〉
かかるほどに、門(かど)を叩(たた)きて、「くらもちの皇子おはしたり」と告(つ)ぐ。「旅の御姿ながらおはしたり」といへば、あひたてまつる。
皇子ののたまはく、「命を捨ててかの玉の枝持ちて来たるとて、かぐや姫に見せたてまつりたまへ」といへば、翁(おきな)持ちて入(い)りたり。この玉の枝に、文(ふみ)ぞつけたりける。
いたづらに身はなしつとも玉の枝(え)を手折(たを)らでさらに帰らざらまし
これをもあはれとも見でをるに、たけとりの翁、走り入りて、いはく、「この皇子に申したまひし蓬萊の玉の枝を、一つの所あやまたず持ておはしませり。何をもちて、とかく申すべき。旅の御姿ながら、わが御家(おほんいへ)へも寄りたまはずしておはしましたり。はや、この皇子にあひ仕(つか)うまつりたまへ」といふに、物もいはず、頬杖(つらづゑ)をつきて、いみじく嘆(なげ)かしげに思ひたり。

〈juppo〉策士くらもちの皇子は「取る物も取りあえずきました!」というアピールのために旅装束を解かずにかぐや姫を訪ねています。その旅姿がどんな衣装かよくわからなくて結局いつもと同じ姿です。
善人の翁はそんなアピールにまんまと乗せられて、そこまでしてくれる人なら早く結婚しなさいと勧めているんですね。いよいよ進退窮まった(?)格好のかぐや姫です。ここまで来ても気の進まなさ全開のご様子ですが。
この相手をどう断るのか、断ることはみなさんもうご存知だと思いますが、気になりますね。でも断るまでにまだ少しお話があるんです。この続きはまだ描いていません。訳してあるのであとは描くだけなんですけど。お待ちください。
9月半ばに母が発熱しまして、まさかコロナ?とかまさか私が無症状感染してたり?とか、実はそんなことは一瞬頭をよぎっただけでそう心配はしませんでした。それより老体の母が38度を超える熱を出しただけで消耗してしまい、1週間近く点滴を打ったりしました。
我が家には8月から訪問医療、訪問看護が入るようになったので、すぐ対応していただき点滴も自宅で打っていました。毎日看護師さんがセットした点滴を、外すのは私がしました。
いろいろと大変だったワケです。ただ大変なのはすることが増えて忙しいからではなく、これは終末医療なんだなと覚悟せざるを得ない現実に対してです。日々弱っていく母と寝起きを共にしながら、少しでも元気になれば嬉しいものの、また弱るとこちらの心もだいぶ折れます。
そんな日々でもできるだけ、ブログは更新したいと思っています。思っているのに1ヶ月ぶりなんですけど。次回はできれば近いうちに!
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