〈本文〉
正月一日(ついたち)は、まいて空のけしきもうらうらとめづらしう、霞(かす)みこめたるに、世にありとある人は、みな姿、かたち心ことにつくろひ、君をもわれをもいはひなどしたる、さまことにをかし。
七日、雪間(ゆきま)の若菜摘み、青やかにて、例(れい)は、さしも、さるもの目近(めぢか)からぬ所に、もてさわぎたるこそをかしけれ。白馬(あをうま)見にとて、里人(さとびと)は車清げにしたてて見に行(ゆ)く。中御門(なかのみかど)の戸閾(とじきみ)、引き過ぐるほど、頭(かしら)一所(ひとところ)にゆるぎあひ、さし櫛(ぐし)も落ち、用意せねば、折れなどして笑ふもまたをかし。左衛門(さゑもん)の陣(ぢん)のもとに、殿上人(てんじやうびと)などあまた立ちて、

〈juppo〉夜更かしをしている間に2月になってしまいましたが、今回から5回ほど、平安時代の1月の様子をお届けします。正月は「しょうがち」と読んだり「むつき」と読んだりするようです。
「うらうら」は「うららかに」と訳しても良かったのですが、「うららか」も最近使わなくなった気がして避けました。「春のうららの〜」という歌もありますが、「うらら」ってどんな?と、言い表しにくい言葉ですよね。そういう陽気になって初めて「こういう感じ!」と言えるというか。そういう言葉は大事にしていきたいですけどね。
それで、1000年前から1月には新年を祝っていたんですね。今と変わらないのは、装いを整えてお祝いの挨拶をするばかりでなく、7日には七草を摘んで食べ、万病邪気を払っていました。中国から伝来した行事だそうです。
「あおうまの節会」は「白馬」だけど「あおうま」と読みます。元は本当に青い馬、と言ってもいわゆる青ではなく青みがかった黒馬で、「アオ」と呼ばれたりするお馬さんを宮中の庭で見る行事で、だんだん白い馬を使うようになったそうですが読み方だけ「あお」が残ったんですって。青い馬を見ることで、これまた邪気を払うとか、中国から伝わって来ました。この行事が現代でも神事として、7日に行われるんですね。
今も昔も新しい年を迎えて祝ったり願ったり心を新たにしたり、そんな1月を皆さんはどうお過ごしでしたか。続きは近いうちに。