〈本文〉
舎人(とねり)の弓ども取りて馬(むま)どもおどろかし笑ふを、はつかに見入れたれば、立蔀(たてじとみ)などの見ゆるに、主殿司(とのもりづかさ)、女官(にようくわん)などの行(ゆ)きちがひたるこそをかしけれ。いかばかりなる人、九重(ここのへ)をならすらむなど思ひやらるるに、うちにて見るは、いとせばきほどにて、舎人の顔のきぬにあらはれ、まことに黒きに、白きもの行きつかぬ所は、雪のむらむら消え残りたる心地して、いと見苦しく、馬のあがりさわぐなども、いとおそろしう見ゆれば、引き入られてよくも見えず。

〈juppo〉もうすぐも何も、明日がバレンタインデーという今日更新していますが、今回のお話はまだ一月七日です。殿上人らが集まって何をしているのかというところで「つづく」にしていました。大したことはしていませんでした。平安時代の、宮中にいる人たちも案外くだらないことをして楽しんでいたのですね。そんな光景でも清少納言さんは、どんな人ならここで暮らすことができるのかしらと、うっとりしていらっしゃいます。
「主殿司」「女官」はともに女官なんですけど、ただの「女官」は「にょうかん」と読んで、位が低いらしいです。
「九重」が宮中のことで、九つの門をくぐって入る天国のような場所に例えているんですね。
そういう人や場所をきらびやかに感じたすぐ後で、宮中ってのはずいぶん狭いなと思っていたり、舎人の顔色が黒いだのと細かい点まで批評しているあたり、正直かつ辛辣です。そうかと思うと今度は暴れる馬が怖いと。馬を見に来たのではなかったのかと。
一月七日といえば七草粥ですが、我が家ではそういう習慣がなかったので今年の一月七日にも私は七草粥は食べませんでした。
前回、宮中でも七草を摘んでいるシーンがありましたけど、結局七草粥を食べる描写はありません。でもこの後また別の日に、お粥が出てくるんですよ。その辺は次回。