〈本文〉
除目(ぢもく)のころなど内わたりいとをかし。雪降りいみじう氷(こほ)りたるに、申文(まうしぶみ)持(も)てありく四位五位、わかやかに、心地よげなるは、いとたのもしげなり。老いて頭(かしら)白きなどが、人に案内言ひ、女房の局(つぼね)などに寄りて、おのが身のかしこきよしなど、心一つをやりて説(と)き聞かするを、若き人々はまねをし笑へど、いかでか知らむ。「よきに奏したまへ、啓(けい)したまへ」など言ひても、得たるはいとよし。得ずなりぬるこそいとあはれなれ。

〈juppo〉2月は短いとわかっていても、毎年思いのほか短いなと痛感します。今年もやっぱり短いです。油断がなりません。
とりあえず最終回というのは、この章にはまだ続きがあるのです。ただこの後は三月、四月のお話で一月についてはここまでなので、続きはその頃になったら描こうかな、と。
「除目」は人事異動のことです。昇進した人がお礼を言いに参内するんですね。有望な若者が宮中を歩いているわけで、勝ち組な人たちですから頼もしく見えるのも道理でしょう。一方、おっさんはどこまでいってもおっさんで、自慢話などをするのを影でマネされています。こういう、ちょっと困った人の特徴をあげつらって笑いに変える、ちょっと良くない楽しみ方はこんな頃からあったのですね。おそらくこの頃も、もちろん今も、本人の耳や目に届かないようにということだけは、くれぐれも気をつけなければいけませんね。
そして、最後の一文は係り結びですね。
お約束通り、今月中に最後までお届けできてホッとしています。来月はまた、「竹取物語」に戻るかもしれませんし、この続きを描くかもしれません。「それよりコレを描いて!」とリクエストがおありの方は、早めにお知らせください。リクエストは常時受け付けてますけどね。