〈本文〉
火に焼けぬことよりも、けうらなることかぎりなし。「うべ、かぐや姫好(この)もしがりたまふにこそありけれ」とのたまひて、「あな、かしこ」とて、箱に入れたまひて、物の枝につけて、御身の化粧(けそう)いといたくして、やがて泊(とま)りなむものぞとおぼして、歌よみくはへて、持ちていましたり。その歌は、
かぎりなき思ひに焼けぬ皮衣(かはごろも)袂(たもと)かわきて今日(けふ)こそは着め
といへり。
〈juppo〉新学期が始まりましたが、皆さん適当に、肩の力を抜いてお過ごしください。
今回、皮衣は「火に焼けない」という情報が藪から棒に出てまいりました。これだから新学期は気が抜けません。いえ、新学期は特に関係ないので気は抜いて大丈夫です。
火鼠の皮衣が特別なものであることは何となくわかっていましたが、その特徴の一つとして「火に焼けない」性質があったらしいです。ここまで読んできた私たちは誰も知りません。この時代には当たり前のことだったとも思えません。とにかく、火に焼けないんです。皮衣は。
そういう特別な皮衣の美しさを堪能した安倍御主人です。大事に箱に戻して、「物の枝」につけていますが、名前をはっきり言わずに曖昧にするときに「物」と言うのですね。だから何かの枝です。名前を特定すると季節も決まってしまうので、いつ読まれても良いようにしたのでしょうか。
安倍御主人はこれをかぐや姫に届ければ、姫と結ばれることは疑う余地なし、と泊まってくる気満々です。大した思い込みですけれど、男ってのは大抵この程度は思い込みで行動していますから、女子の皆さんは気をつけてください。個人の感想ですけど。
この方は大掛かりな冒険もせず、いるのかもしれませんが家来などその他の人も出てこないので、今回は完全に一人芝居な6コマでお送りしました。次回は当然、かぐや姫が出てきますのでお楽しみに。


