〈本文〉
三月三日は、うらうらとのどかに照りたる。桃の花の今咲きはじむる。柳などをかしきこそさらなれ。それもまだ、まゆにこもりたるはをかし。ひろごりたるはうたてぞ見ゆる。おもしろく咲きたる桜を、長く折りて、大きなる瓶(かめ)にさしたるこそをかしけれ。桜の直衣(なほし)に出袿(いだしうちき)して、まらうどにもあれ、御せうとの君達(きんだち)にても、そこ近くゐて物などうち言ひたる、いとをかし。

〈juppo〉ここからの4回は、三月四月についてのお話です。五月も半ばだというのに。
三月三日といえば桃の節句ですね。この頃から、貴族の子女がお人形やらで遊ぶ日であったようですが、お話にはその様子は出てきません。「上巳(じょうし)の節句」と言って三月上旬の巳の日に祝ったそうです。水辺でお祓いをする「曲水宴(きょくすいえん)」とかいうイベントもあったようです。
そんなことはどうでも良かったのかどうかわかりませんが、清少納言さんはあくまで外の世界に目を向けていますね。「木の花は」や「鳥は」など、「枕のペディア」と呼びたいような自然を羅列したシリーズが「枕草子」にはありますが、それを補うような内容ですね。
「柳」が「まゆにこもりたる」というのは、柳の葉がまだ開ききってなくて丸くなっているのを表現しています。絵にしたように、人の眉と蚕の繭をかけて言ったりしてるそうです。
4コマ目の桜は、この時代は山桜でソメイヨシノではありません。
木や花だけでなく、今回は周りの人の装いにも細かい関心を寄せている清少納言さんです。
「桜の直衣」は表が白で裏が赤の直衣で、「出袿」はその直衣の下に着る袿を、見えるように出して着ることだそうです。1980年代にトレーナーの下のシャツの裾をはみ出させて着るのが流行りましたが、そんな感じですかね。そんなファッションもこうして解説する時代が来たと思うと、100年や200年はあっという間なんでしょうね。
次回は近日中に。今月中にあと3回、更新します。
ブログや漫画を楽しく拝読いたしました。
とても分かりやすく漫画化されていて、感激しました。
竹取物語の漫画を古文の授業で使わせていただけないでしょうか。
(インターネット上では使用しません)
ご返信いただけると幸いです。よろしくお願いいたします。
翁から直々にコメントがいただけるとは!(^^;)
漫画は授業などでお使いいただいて構いません。
楽しく活用していただけたら嬉しいです。
よろしくお願いします!
とても嬉しいです。