〈本文〉
晉太元中、武陵人捕魚爲業。縁溪行、忘路之遠近。忽逢桃花林、夾岸數百歩、中無雜樹、芳華鮮美、落英繽紛。漁人甚異之、復前行欲窮其林。林盡水源、便得一山。山有小口、髣髴若有光、便捨船從口入。
〈書き下し文〉
晉(しん)の太元(たいげん)中(ちゅう)、武陵(ぶりょう)の人魚(うお)を捕(と)らふるを業(げふ)と爲(な)す。溪(たに)に縁(そ)ひて行(ゆ)き、路(みち)の遠近を忘る。忽(たちま)ち桃花(たうくわ)の林に逢ひ、岸を夾(はさ)婿と數(すう)百歩、中(うち)に雜樹(ざつじゆ)無く、芳華(はうくわ)鮮美(せんび)、落英(らくえい)繽紛(ひんぷん)たり。漁人(ぎよじん)、甚(はなは)だ之(これ)を異(い)とし、復(ま)た前(すす)み行(ゆ)きて其(そ)の林を窮(きは)めんと欲(ほつ)す。林水源に盡(つ)きて、便(すなは)ち一山(いちざん)を得たり。山に小口(せうこう)有り、髣髴(はうふつ)として光有るが若(ごと)く、便ち船を捨てて口從(よ)り入(い)る。

〈juppo〉桃源郷という言葉がありますね。理想郷とかユートピアとか、そういうのと同義ですが、もともとはこのお話からのようですよ。
陶淵明(とうえんめい)という中国の詩人が編纂した書物に、詩とともに収められたお話です。詩の方も、同じような内容です。
「太元」は晉の時代の元号で、晉は4世紀ごろの中国の王朝です。漫画では「晋」にしています。漢文だから仕方ないんですけど、相変わらず難しい漢字ばっかりで、そこからすでにハードルが上がってますよね。訳を作るのには本やネットにあるものを参考にするんですけど、今回は漢和辞典も活用しました。漢字そのものの意味がわかれば訳しやすいと思ったからなのですが、なんと字によってはこの作品の一文が引用されているではないですか。それも参考にさせていただきました。漢文の学習に漢和辞典が有効、てなことにこの歳になって気づいた次第です。長生きはするものです。
「武陵」は地名です。數百歩の「歩」は長さの単位で、一歩は約1.5メートルだそうなので、数百mにしときました。歩幅にしては長い単位です。髣髴は彷彿のことではなく、「ほのかに」とか「わずかに」という意味だそうです。
桃の花の林が突然現れたことも不思議なことですが、それを調べるよりも目の前に穴があったら入ってしまうのが人の性なのですね。とりあえず入ってみる、中に何があるかは次回のお楽しみです。全部で4回続きます。あと3回です。
リクエストに応えていただき、ありがとうございます。
桃花林の風景や、山のトンネル?の部分は、授業で全然イメージがわかなかったのですが、マンガで、しかも色つきで描かれていると、本当にイメージしやすいし、素敵です。
続きを楽しみにしています!!
コメントありがとうございます。
桃花の林や、これから出てくる穴の中の世界は、完全に私が抱いたイメージなので、皆さんそれぞれで想像してもらったら良いと思うのですが、多少そのお手伝いになれたら幸いです。
続きも早めに更新するつもりですので、お待ちくださいね。