〈本文〉
うけたまはりて、すなはち、
あさみどりかひある春にあひぬればかすみならねどたちのぼりけり
とよむ時に、帝、ののしりあはれがりたまひて、御しほたれたまふ。人々もよく酔(ゑ)ひたるほどにて、酔ひ泣きいとになくす。帝、御袿(うちぎ)ひとかさね、はかまたまふ。「ありとある上達部(かんだちめ)、みこたち、四位五位、これに物ぬぎてとらせざらむ者は、座より立ちね」とのたまひければ、かたはしより、上下(かみしも)みなかづけたれば、
〈juppo〉前回お題が出た「鳥飼」の歌からの第2回です。だいたいこういう、歌の解釈とか修辞法とか、テストに出るんですよねーめんどくさいですねー。
「あさみどり」はここでは「かすみ」にかかる枕詞ですが、「あさみ『どりかひ』ある」までに「とりかひ」=「鳥飼」が入っている!という、「隠題歌」てなものにもなっているのですね。芸が細かいです。
「しほたる」は漢字で書くと「潮垂る」で、海や湖の水に濡れた様子を言った言葉らしいですが、袖が濡れるのは泣いてるってことだな、と「泣く」という意味にも使うのですね。まあロマンチックな、というか遠回りな言い方ですよね。
ところで「酔ひ泣きいとになくす」は、3コマ目のように訳したために「なくす」が「泣く」を意味するように見えてしまいそうですが、これは「に(二)なく、す」なんです。「またとなく、する」ということです。何をするかというと「酔ひ泣き」を、です。
歌が素晴らしかったので、思わずご褒美をあげてしまう帝です。他の人もあげるように強要さえしています。「かづけたれば」の「かづく」という動詞には、「衣服や布を与える」という意味と、もらった衣服や布を「左の肩にかける」という意味があります。与えるのともらうのと両方の意味が?と思いますが、与える方は下二段、もらう方は四段と、これまたテストに出そうな違いがあるようです。では「かづけたれば」はどっち?
珍しく真面目な解説になってしまいました。お話の中では、歌に感動しているようで一堂酔っ払いの集団なのかな、という見方もできるわけですが。
もう1回続きます。近日中に。
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