〈本文〉
かづきあまりて、ふた間(ま)ばかり積みてぞおきたりける。かくて、かへりたまふとて、南院(なんゐん)の七郎君(しちらうぎみ)といふ人ありけり。それなむ、このうかれめのすむあたりに、家つくりてすむと聞(きこ)しめして、それになむ、のたまひあづけたる。「かれが申さむこと、院に奏(そう)せよ。院よりたまはせむ物も、かの七郎君につかはさむ。すべてかれにわびしきめな見せそ」とおほせたまうければ、つねになむとぶらひかへりみける。
〈juppo〉夏バテで果ててしまう前に最終回を迎えられて何よりです。もうすっかりお忘れかもしれませんが、「かづく」という動詞の話を前回しました。回をまたいで、今回その「かづく」から始まっています。これについての説明は前回したのでもういいですね。
とにかくご褒美に衣服をたんまりいただいたようです。いただいた衣服は左肩にかけるそうなんですが、かけきらないので積んであります。「ふた間」の「間」には今のように「部屋」という意味と「柱と柱の間」という意味があるそうです。積まれたものの量が、すごくたくさんなんだろう、と思っておけば良いと思います。
帝はこの遊女を気に入ったのでしょうが、そこはやはり身分というものがあるので、しかるべき所に置いて、ちょっと離れて大事にしようと思ったようですね。「南院」は天皇の皇子の一人を指すようですが、「七郎君」が誰なのかは定かでないようです。それなりに確かな身の上の人なんでしょう、世話を頼むくらいですから。つい「しちろうくん」と読んでしまいますが、別にそれでもいいと思います。違ってますけど。
最終回なのに、なんだか投げやりな説明になってますね。暑さのせいだと思ってください。
次回に何を描くかも、ちょっと未定です。
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