〈本文〉
衆曰、當與從事議之、超怒曰、吉凶決於今日、從事文俗吏、聞此必恐而謀泄、死無所名、非壯士也、衆曰善、初夜遂將吏士徃奔虜謍、會天大風、超令十人持鼓藏舍後、約曰、見火然、皆當鳴鼓大呼、餘人悉持弓弩、夾門而伏、超乃順風從火、前後鼓噪、虜衆驚亂、超手格殺三人、
〈書き下し文〉
衆曰わく、「当(まさ)に従事と之を議すべし」。超怒りて曰わく、「吉凶は今日に決す。従事は文俗の吏なれば、此れを聞きて必ず恐れて謀(はかりごと)泄(も)れん。死して名とせらるる所無きは、壮士に非ざるなり」。衆曰わく、「善し」。初夜に遂に吏士を将(ひき)いて往きて虜の営に奔(はし)る。会(たまた)ま天大いに風ふく。超、十人をして鼓(つづみ)を持ちて虜舎の後に蔵(ひそ)ましめ、約して曰わく、「火の然(も)ゆるを見れば、皆な当(まさ)に鼓を鳴らして大いに呼(さけ)ぶべし」。余人悉(ことごと)く弓弩(きゆうど)を持ち、門を夾(さしはさ)みて伏す。超乃ち風に順(したが)いて火を縦(はな)ち、前後鼓噪(こそう)す。虜衆驚き乱れ、超手ずから三人を格殺し、

〈juppo〉寒い寒いと言っている間に2月も終わりが見えてきました。本当に短いですね、2月。
物語はいよいよ佳境です。前回班超さんが演説していた作戦を、実行に移す時が参りました。このブログではいつもそうですが、どの人物も私が描くと可愛いキャラになってしまうので、敵も味方も憎らしさも怖さも微塵もないのが遺憾です。何しろ目指す匈奴を一気呵成にやってしまえ、な班超さんたちなのです。
1コマ目、部下の皆さんが「相談しないと」と言っている郭恂さん、皆さんお忘れかもしれませんが第3回で班超さんとともに西域に来ることになった秘書の方です。まだ出番が残っているので、覚えておいてくださいね。その郭恂さんは、班超さんが言うには「文俗の吏」だと。引用元の解説によれば「礼法風俗に拘泥する小役人」のことだそうです。そういうヤツに相談しても作戦決行の妨げになりかねないと言ってるんですね
3コマ目の班超さんのセリフ、ほぼ訳してなくて書き下し文と大差ないですね。でも、こういう言葉遣いはよく見ますよね。「死んで名を残さない者は壮士じゃない!」て意味ですけど、一応。
実はイマイチよくわからなかったのでそのままなのが「壮士」という言葉です。血気盛んな男子とか、男らしい男とか、そういう意味だと思うんですけど、ちょっとジェンダー的に訳しにくいというのもあって、そのままにしています。
「初夜」は「初めての夜」という意味ではなく、ここでは「夕方から夜中までの時刻」だそうです。そんな時間ですが、まんまと火に包まれてしまったということは、匈奴の人たちは寝入っていたのでしょうね。
寝込みを襲った勢いで3人も素手で殺しちゃったりして、血生臭い展開になりそうなところで次回に続きます。殺伐としてきましたが終わりまでもう少しお付き合いください。