2022年09月15日

先帝身投@

ご無沙汰です。元気です。リクエストにお応えします。「平家物語」です。
〈本文〉
 源氏のつは物共、すでに平家の舟に乗り移りければ、水手(すいしゆ)・梶取(かんどり)ども射殺(ゐころ)され、きり殺されて、舟をなをすに及ばず、舟そこにたはれ臥(ふ)しにけり。新中納言知盛卿、小舟に乗って、御所の御舟に参(まい)り、「世のなかは、今はかうと見えて候。見ぐるしからん物共、みな海へ入れさせ給へ」とて、ともへにはしりまはり、はいたり、のごうたり、塵ひろい(ひ)、手づから掃除せられけり。女房達、「中納言殿、いくさはいかにや、いかに」と口々にとひ給へば、「めづらしきあづま男をこそ御らんぜられ候はんずらめ」とて、からからとわらひ給へば、「なんでうのただいまのたはぶれぞや」とて、声々におめきさけび給ひけり。
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〈juppo〉この夏はいつになく忙しかったのです。明日くらいからまた忙しくなるんですけど、今日までぱったり暇になっていたので、ずいぶん前にいただいたリクエストに取り掛かっておりました。
「平家物語」なんで、もうだいたいお分かりのことでしょうが悲しい話です。タイトルが既に「身投」ですから。その、身投げする人は今回出てきていませんが、新中納言知盛卿という人は以前「能登殿の最期」に登場してラストシーンを迎えていた人です。

 冒頭からバタバタ殺されている平家側の水手、舵取の方々は船を動かす人たちで、非戦闘員でありながら真っ先に殺されたのは源氏側のそういう戦略です。こうして船を動かせなくして、一網打尽にするんですね。知盛さんもその様子を見て覚悟を決めたようです。そんな刹那にも身の回りを清め、女子たちに軽口を叩くなど、さすが天下の平家武士、な貫禄です。
 戦慣れしていない女子らはまだ事態を呑み込めていませんね。戦場にあっても不慣れな立場なら、そんなものかもしれません。
 周囲の状況はともかく、船の上では何やら楽しげな雰囲気で今回は終わりますが、全部で4回あるのでだんだん悲しくなると予想しつつ、次回をお待ちください。なるべく、近日中にお届けします。
posted by juppo at 03:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 平家物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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