〈白文〉
葡萄美酒夜光杯
欲飮琵琶馬上催
醉臥沙場君莫笑
古來征戰幾人囘
〈書き下し文〉
葡萄(ぶどう)の美酒 夜光の杯
飲まんと欲すれば 琵琶 馬上に催(うなが)す
酔うて沙場に臥(ふ)すとも 君 笑うこと莫(な)かれ
古来 征戦 幾人(いくにん)か回(かえ)る
〈juppo〉詠んだのは王翰(おうかん)という人です。8世紀初期の頃の、唐の詩人です。お酒が好きだったようです。このころ、シルクロードによって西方の文化や事物が唐にもたらされたそうで、葡萄酒とか夜光杯とか琵琶はそういうよその国から来た、エキゾチックなアイテムとして詠まれているのだとか。
夜光杯(やこうはい)は普通名詞で、そういう種類の杯があるんですね。玉(ぎょく)で作られていて、夜、月光に透かすと光が見えたのでこう呼ばれるそうです。漫画ではグラスのように描いてしまいましたが、ガラス製ではないようです。
涼州は地名です。
一人で酒を飲んでいるように描いていますが、だんだん戦の話になっていくので、戦場で夜、酒盛りでもしているのかもしれません。馬上で琵琶を鳴らしたのが男なのか女なのか迷いましたが、「催(うなが)す」が出発を促すとも読めるけれども、琵琶の音は出陣を促すにはふさわしくないそうですし、琵琶を弾くのは現地の人なのかもしれないと考えて、女の人にしました。
砂漠で倒れるまで飲んでしまうあたり、ちょっとヤケになっている感じもします。四句目に至って戦で亡くなった兵士に想いを馳せ、あぁ戦は嫌だなぁ、という気持ちを吐露しているようです。そんなことから近代中国では厭戦詩として唐詩選に採用されなかった歴史もあるそうです。
そんな話をこの本で読みました。
風呂では詠んでいません。
次回も漢詩です。紅白の頃に。