〈本文〉
「繰り言のやうには侍(はべ)れど、尽きもせず、うらやましく、めでたく侍るは大斎院より上東門院へ、『つれづれ慰みぬべき物語や候(さぶら)ふ。』と尋ね参らせさせ給(たま)へりけるに、紫式部を召して、『何をか参らすべき。』と仰せられければ、『めづらしきものは、何か侍るべき。新しく作りて参らせ給へかし。』と申しければ、『作れ。』と仰せられけるを承りて、源氏を作りたるとこそ、いみじくめでたく侍れ。」
と言ふ人侍れば、また、
「いまだ宮仕へもせで、里に侍りける折、かかるもの作り出(い)でたりけるによりて、召し出でられて、それゆゑ紫式部といふ名は付けたり、とも申すは、いづれかまことにて侍らむ。その人の日記(にき)といふもの侍りしにも、『参りける初めばかり、恥づかしうも、心にくくも、また添ひ苦しうもあらむずらむと、おのおの思へりけるほどに、いと思はずにほけづき、かたほにて、一文字(いちもんじ)をだに引かぬさまなりければ、
〈juppo〉暑すぎる夏もようよう終わりになりそうですね。皆さまいかがお過ごしでしょうか。思い返すと今年の夏も、熱中症と日々戦っていただけで過ぎてしまった気がします。地球沸騰化の夏を生き延びただけで良しとするか〜という心境です。
さて今回は久しぶりに「無名草子」から『紫式部』です。「無名草子」は以前、だいぶ以前、「源氏物語」の部分を描いたぶりになりますが、ここはその前にくる文章でしょうか。
「無名草子」は女たちが古典の作品や作家を批評し合っている会話文で出来ていますよね。その会話が、誰の発言なのかよく分からないまま進んでいくのですが別に誰であろうと、内容に差し障りはない作りになってると思います。ただ、セリフの中に式部の日記の文が差し込まれていたり、ざっと読むと分かりにくい構造ではあります。
大河ドラマのおかげで「源氏物語」成立の詳細にも注目されていますが、ここでは、彰子からのリクエストで書き始めた説と、出仕以前にもう書いていたので宮中に取り立てられた説を並べて、議論しているようです。その諸説あります問題に答えは出ないけど、とりあえず素晴らしいわね!と盛り上がっている女たちです。
1コマ目「大斎院」は村上天皇の皇女の選子さん、「上東門院」は大河ドラマでもおなじみの、彰子さんです。
もう1回続きます。近日中に。
【関連する記事】
こんなに早く書いていただけるとは思わず、、、ありがたい限りです!
次も楽しみにしています!
マメにチェックしていただき、ありがとうございます。試験に間に合わないといけないと思い、頑張って描きました。
まだ続きがあるとか、他にも描いて欲しいなどご要望があれば、またお寄せくださいね。
試験がんばってください!