5月だから五月ネタでちょうどいいな!と思いながら描いているうちに6月になってしまいました。リクエストにお応えします。
〈本文〉
五月ばかりなどに山里にありく、いとをかし。草葉も水もいとあをく見えわたりたるに、上(うへ)は釣れなくて草生ひ茂りたるを、ながながとただざまに行けば、下はえならざりける水の、ふかくはあらねど、人などのあゆむにはしりあがりたる、いとをかし。
左右にある垣にある、ものの枝などの、車の屋形などに、さし入るを、いそぎてとらへて折らんとするほどに、ふと過ぎてはづれたるこそ、いとくちをしけれ。
蓬(よもぎ)の車に押しひしがれたりけるが、輪の廻りたるに、近ううちかかりたるもをかし。

〈juppo〉でも、ここでの五月(さつき)は旧暦ですから、今の暦ではこれからの季節なんですよね。春を過ぎて暖かくなり、野山も明るさを増してくる季節です。お出かけには最適です。梅雨にも入っているころですから、晴れ間を見て出かけたのでしょうね。
景色が主な話題なので、久しぶりに塗り絵でお送りしています。
「山里をありく」と始まっていますが、「ありく」は「歩く」ではないんですね。牛車に乗ってるんです。気ままにうろついている様を表す語のようです。「あゆむ」だったら「歩く」の意味なんですって。「散策」では結局歩くという意味になっちゃうんですけど、他に言葉が思いつかず、こうしました。
「上はつれなくて」下に水がある状態てのがどういうのかよくわからなかったんですけど、自然の地形にある水場で池や川とはまた違うのかな、「えならざりける水」ということはそれでも相当情緒がある景色なのかな、うーん、やっぱりよくわからない・・な結論で描いたのがコレです。
それとおそらく、清少納言さんは他の女官の方々とも連れ立ってお出かけしているような気もするんですけど、台詞的に他に女性の登場人物がいないのを良いことに、ひとり(プラス従者の方たち)でお出かけしたように描いちゃいました。ここには描いてないけど、前後に他の牛車もいるのかも〜、なんて想像で読んでいただいても良いかと思います。
「蓬の車に押しひしがれたりけるが」てのはアレですね、おなじみの「同格の『の』」ですね。
漫画ではそういうふうに訳していませんが、「蓬で、車に押しつぶされたのが」というように訳します。でもそう訳すとちょっとしつこい感じですよね。
道々車輪に踏まれて潰れたよもぎが、そのまま車輪にくっついて、車輪が回って上の方にくるたびに香りがしてくるということなんですね。のどかですね〜。
今日、6月3日は日曜日で、すごくいいお天気ですが、暑くてとても野山に出かけようなどとは思えない日和です。平安時代にはそんなに暑くなかったんでしょうね。暑い時もあったんでしょうけど。牛車の中なら熱中症にはならないのかもしれませんが、現代人の感覚では水をこまめに飲んで!とアドバイスしたくなるお話です。
千年前の気候に思いを馳せた誕生日でした。
posted by juppo at 15:48|
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