〈本文〉
女房と物いひ、たはぶれごとなどし給ふ。御いらへをいささかはづかしとも思ひたらず聞え返し、そら言などのたまふは、あらがひ論じなどきこゆるは、目もあやに、あさましきまであいなう、おもてぞあかむや。御くだ物まゐりなどとりはやして、御前にもまゐらせ給ふ。
「御(み)帳のうしろなるは誰(たれ)ぞ」と問ひ給ふなるべし。さかすにこそはあらめ、立ちておはするを、なほほかへにやと思ふに、いと近うゐ給ひて、ものなどのたまふ。まだまゐらざりしより聞きおき給ひけることなど、「まことにや、さありし」などのたまふに、御几(みき)帳へだてて、よそに見やりたてまつりつるだにはづかしかりつるに、いとあさましうさしむかひきこえたる心地、うつつともおぼえず。行幸など見るをり、車のかたにいささかも見おこせ給へば、下簾(したすだれ)ひきふたぎて、透影(すきかげ)もやと扇(あふぎ)をさしかくすに、

〈juppo〉この先もまだまだ長いので、一旦置いて他の作品を描こうかなーとも思いましたが、やっぱり中途半端なのがスッキリしないので、終わりまで描くことにします。しばらく続きます。
清少納言さんは中宮様や大納言殿(伊周)を見てもドキドキするのですが、その周りに仕えている女房たちの貫禄にも恐れ入っているんですよね。偉い人と普通に話しているとその人も偉く見えてしまう効果ですね。
「くだ物」は果物を指すこともあるようですが、果実や木の実で作った食品やお菓子のことも言うようで、「ここではお菓子」と参考書にあったのでそうしました。どんなお菓子なのかはよく分からないまま描いています。
行幸は天皇のお出かけのことですね。それを見ている車の中でさえ、自分の姿が見られるのが恥ずかしいと。すだれを下げても影が見えてしまうのを心配するほどの奥ゆかしさとは、当時の人には普通の感覚なのか、清少納言さんがひときわ奥ゆかしいのか、見極め難いですね。テレビにうっかり映ってしまった一般女性が「すっぴんだから!」と頑なに顔を隠したりする感覚なのでしょうか。
ところで、声優の鶴ひろみさんの訃報を聞いて以来、「ドキンちゃんありがとう」「ブルマさよなら」などなどの言葉を目にしつつ、「いやいや、鶴ひろみといえばペリーヌでしょ?」な思いが高まって『ペリーヌ物語』が見たくてたまらなくなりTSUTAYAでレンタルしてきました。借りてきたのにまだ見てません。早く見たい。
ご冥福をお祈りします。