〈本文〉
木曾殿、「契りはいまだ朽ちせざりけり。義仲が勢はかたきに押し隔てられ、山林にはせ散って、この辺にもあるらんぞ。なんぢが巻かせて持たせたる旗、揚げさせよ。」とのたまへば、今井が旗をさし揚げたり。京より落つる勢(せい)ともなく、勢田より落つる者ともなく、今井が旗を見つけて三百余騎ぞはせ集まる。
木曾大きに喜びて、「この勢あらば、などか最後のいくさせざるべき。ここにしぐらうで見ゆるはたが手やらん。」「甲斐(かい)の一条次郎殿とこそ承り候へ。」「勢はいくらほどあるやらん。」「六千余騎とこそ聞こへ候へ。」「さては、よいかたきごさんなれ。同じう死なば、よからうかたきに駆け会うて、大勢の中でこそ討死をもせめ。」とて、まつ先にこそ進みけれ。
〈juppo〉『平家物語』は古文の中でも読みやすい作品ですね。
・・と、いうことをここ最近ずっと読んでいて感じました。今さらですけど。本文では「ざり」とか「けり」とかに惑わされますが、セリフを作ってみると、ほとんど言葉を置き換えなくても済むんですよー。
「しぐらうで」とか「ごさんなれ」はまた耳なれない言葉ですけどね。
「しぐらうで」は「時雨」の黒い雲が群がって見える様子から出来た言葉という説もあるようです。
さて、再会した木曾殿と今井四郎ですが、出た、「前世の契り」。
「男同士でも?」な展開ですね。まぁこの場合の契りは別に恋愛感情の契りではなく、主従とか同志とか兄弟とかの契りだったのでしょうね。
前回巻いていた旗を今回は揚げることになったのですが、この旗は目印ですから、おそらく何かの図柄が描かれていたものと思います。
今回、私にはそれが分からなかったので白旗にしてしまいました。皆さんでお好きな図案を描き入れてください。また、正解をご存知の方はお知らせください。
その旗を差し上げた途端、周辺に隠れていた味方が三百余騎も集まって来た、というのはちょっと考えると凄いシーンですね。もの凄く大掛かりな「缶蹴り」を、私はイメージしているのですが。
ところが、敵の軍勢は六千余騎ですよ。軽く20倍じゃないですか。木曾殿はさらっと「よいかたき」と言ってますが、そんなことで血湧き肉踊っちゃうんですから、ホントに武士という人たちは究極のMですよね。死にたくてたまらない雰囲気がもう漂っています。ここまでそれを我慢して来たのだから尚更ですね。
続きます。




