2021年02月28日

正月一日はD

2月も今日で終わりです。とりあえず、最終回です。
〈本文〉
 除目(ぢもく)のころなど内わたりいとをかし。雪降りいみじう氷(こほ)りたるに、申文(まうしぶみ)持(も)てありく四位五位、わかやかに、心地よげなるは、いとたのもしげなり。老いて頭(かしら)白きなどが、人に案内言ひ、女房の局(つぼね)などに寄りて、おのが身のかしこきよしなど、心一つをやりて説(と)き聞かするを、若き人々はまねをし笑へど、いかでか知らむ。「よきに奏したまへ、啓(けい)したまへ」など言ひても、得たるはいとよし。得ずなりぬるこそいとあはれなれ。
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〈juppo〉2月は短いとわかっていても、毎年思いのほか短いなと痛感します。今年もやっぱり短いです。油断がなりません。
 とりあえず最終回というのは、この章にはまだ続きがあるのです。ただこの後は三月、四月のお話で一月についてはここまでなので、続きはその頃になったら描こうかな、と。

 「除目」は人事異動のことです。昇進した人がお礼を言いに参内するんですね。有望な若者が宮中を歩いているわけで、勝ち組な人たちですから頼もしく見えるのも道理でしょう。一方、おっさんはどこまでいってもおっさんで、自慢話などをするのを影でマネされています。こういう、ちょっと困った人の特徴をあげつらって笑いに変える、ちょっと良くない楽しみ方はこんな頃からあったのですね。おそらくこの頃も、もちろん今も、本人の耳や目に届かないようにということだけは、くれぐれも気をつけなければいけませんね。
 そして、最後の一文は係り結びですね。

 お約束通り、今月中に最後までお届けできてホッとしています。来月はまた、「竹取物語」に戻るかもしれませんし、この続きを描くかもしれません。「それよりコレを描いて!」とリクエストがおありの方は、早めにお知らせください。リクエストは常時受け付けてますけどね。
posted by juppo at 20:48| Comment(0) | 枕草子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年02月23日

正月一日はC

暖かいです。花粉症です。続きです。
〈本文〉
 あたらしうかよふ婿(むこ)の君などの内へまゐるほどをも、心もとなう、所につけてわれはと思ひたる女房ののぞき、けしきばみ、奥の方(かた)にたたずまふを、前(まへ)にゐたる人は心得て笑ふを、「あなかま」とまねき制すれども、女(をんな)はた知らず顔(かほ)にて、おほどかにてゐたまへり。「ここなるもの取りはべらむ」など言ひ寄りて、走り打ちて逃ぐれば、ある限り笑ふ。男君(をとこぎみ)も、にくからずうちゑみたるに、ことにおどろかず顔すこし赤みてゐたるこそをかしけれ。また、かたみに打ちて、男をさへぞ打つめる。いかなる心にかあらむ、泣き腹立ちつつ、人をのろひ、まがまがしく言ふもあるこそをかしけれ。内わたりなどのやんごとなきも、今日(けふ)はみな乱れてかしこまりなし。
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〈juppo〉2月というのに汗ばむほど暖かくなったと思ったら、また寒くなるようです。2月ですから。致し方ありません。

 さて宮中は、雪で凍るほど寒かったはずの一月半ば、引き続きバトルフィールドと化しております。身分の上下も関係なく、終いには女も男も関係なく、ひたすら人のスキを狙っての打ち合いに興じているようですね。皆さん笑ってるから微笑ましい余興なのかと思ったら、やっぱり泣いたり怒ったりする人もいたようで、その後の人間関係に亀裂が生じなかったのかと心配になります。もともとお正月のめでたい行事のようなので、笑って済ますのがお約束だったのでしょうけれど。少なくとも清少納言さんの目には「をかしけれ」と映っているわけですし。
 それで、打たれた女性がその後実際に子宝に恵まれたのか、ということも気になるところです。偶然にもその後男児を生むことになった人を叩いた実績のある人は当然「私が打ったからよ!!!」と鼻高々だったことでしょうね。

 さらにもう1回あります。今月中にお届けすると思います。
posted by juppo at 23:27| Comment(0) | 枕草子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年02月18日

正月一日はB

寒いです。続きです。
〈本文〉
 八日、人のよろこびして走らす車の音、ことに聞えて、をかし。
 十五日、節供(せく)まゐりすゑ、かゆの木ひき隠して、家の御達(ごたち)、女房(にようばう)などのうかがふを、打たれじと用意して、常にうしろを心づかひしたるけしきもいとをかしきに、いかにしたるにかあらむ、打ち当てたるは、いみじう興(きよう)ありて、うち笑ひたるは、いとはえばえし。ねたしと思ひたるも、ことわりなり。
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〈juppo〉一月のカレンダーは半ばまで進んでいきます。宮中での歳時記が正確に綴られるとともに、後半は貴族らしからぬバトルシーンが展開されています。

 最初のコマは、七日に新たに位が授けられた男性貴族がお礼を言いに参内している様子です。

 前回予告した通り、七日の七草粥の後、十五日にもお粥を食べる習慣があったようです。「かゆの木」は、そのお粥を炊いた木の燃え残りを削ったものだそうです。それで女性の腰を打つと、男の子を授かると言われていたんですって。そんな意味合いは置き去りにされて、もはや行動自体が目的になっている感じですけどね。人のスキをうかがって奇襲をかける、鬼ごっことか缶蹴りとか、そういう遊びは廃れないものですね。他の動物と違って人間には、成功の要素の中に「してやったり」が入ることに喜びを感じてしまう習性があるんでしょう。

 平安時代の人々は、新年を祝う行事を粛々と行いながら、こんな風にカラダを動かして楽しんでもいたのかと思うと、なんだか親しみを感じませんか。昔も今も、この時期は寒いですからね。温かいものを食べて、カラダを動かして私たち現代人も元気に過ごしたいものですね。

 まだ、続きます。
posted by juppo at 02:57| Comment(0) | 枕草子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年02月13日

正月一日はA

もうすぐバレンタインですね。続きです。
〈本文〉
舎人(とねり)の弓ども取りて馬(むま)どもおどろかし笑ふを、はつかに見入れたれば、立蔀(たてじとみ)などの見ゆるに、主殿司(とのもりづかさ)、女官(にようくわん)などの行(ゆ)きちがひたるこそをかしけれ。いかばかりなる人、九重(ここのへ)をならすらむなど思ひやらるるに、うちにて見るは、いとせばきほどにて、舎人の顔のきぬにあらはれ、まことに黒きに、白きもの行きつかぬ所は、雪のむらむら消え残りたる心地して、いと見苦しく、馬のあがりさわぐなども、いとおそろしう見ゆれば、引き入られてよくも見えず。
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〈juppo〉もうすぐも何も、明日がバレンタインデーという今日更新していますが、今回のお話はまだ一月七日です。殿上人らが集まって何をしているのかというところで「つづく」にしていました。大したことはしていませんでした。平安時代の、宮中にいる人たちも案外くだらないことをして楽しんでいたのですね。そんな光景でも清少納言さんは、どんな人ならここで暮らすことができるのかしらと、うっとりしていらっしゃいます。
 「主殿司」「女官」はともに女官なんですけど、ただの「女官」は「にょうかん」と読んで、位が低いらしいです。
 「九重」が宮中のことで、九つの門をくぐって入る天国のような場所に例えているんですね。

 そういう人や場所をきらびやかに感じたすぐ後で、宮中ってのはずいぶん狭いなと思っていたり、舎人の顔色が黒いだのと細かい点まで批評しているあたり、正直かつ辛辣です。そうかと思うと今度は暴れる馬が怖いと。馬を見に来たのではなかったのかと。

 一月七日といえば七草粥ですが、我が家ではそういう習慣がなかったので今年の一月七日にも私は七草粥は食べませんでした。
 前回、宮中でも七草を摘んでいるシーンがありましたけど、結局七草粥を食べる描写はありません。でもこの後また別の日に、お粥が出てくるんですよ。その辺は次回。
posted by juppo at 03:35| Comment(0) | 枕草子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年02月01日

正月一日は@

深夜にこっそり更新しています。今回は「枕草子」です。
〈本文〉
 正月一日(ついたち)は、まいて空のけしきもうらうらとめづらしう、霞(かす)みこめたるに、世にありとある人は、みな姿、かたち心ことにつくろひ、君をもわれをもいはひなどしたる、さまことにをかし。
 七日、雪間(ゆきま)の若菜摘み、青やかにて、例(れい)は、さしも、さるもの目近(めぢか)からぬ所に、もてさわぎたるこそをかしけれ。白馬(あをうま)見にとて、里人(さとびと)は車清げにしたてて見に行(ゆ)く。中御門(なかのみかど)の戸閾(とじきみ)、引き過ぐるほど、頭(かしら)一所(ひとところ)にゆるぎあひ、さし櫛(ぐし)も落ち、用意せねば、折れなどして笑ふもまたをかし。左衛門(さゑもん)の陣(ぢん)のもとに、殿上人(てんじやうびと)などあまた立ちて、
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〈juppo〉夜更かしをしている間に2月になってしまいましたが、今回から5回ほど、平安時代の1月の様子をお届けします。正月は「しょうがち」と読んだり「むつき」と読んだりするようです。
 「うらうら」は「うららかに」と訳しても良かったのですが、「うららか」も最近使わなくなった気がして避けました。「春のうららの〜」という歌もありますが、「うらら」ってどんな?と、言い表しにくい言葉ですよね。そういう陽気になって初めて「こういう感じ!」と言えるというか。そういう言葉は大事にしていきたいですけどね。

 それで、1000年前から1月には新年を祝っていたんですね。今と変わらないのは、装いを整えてお祝いの挨拶をするばかりでなく、7日には七草を積んで食べ、万病邪気を払っていました。中国から伝来した行事だそうです。
 「あおうまの節会」は「白馬」だけど「あおうま」と読みます。元は本当に青い馬、と言ってもいわゆる青ではなく青みがかった黒馬で、「アオ」と呼ばれたりするお馬さんを宮中の庭で見る行事で、だんだん白い馬を使うようになったそうですが読み方だけ「あお」が残ったんですって。青い馬を見ることで、これまた邪気を払うとか、中国から伝わって来ました。この行事が現代でも神事として、7日に行われるんですね。
 
 今も昔も新しい年を迎えて祝ったり願ったり心を新たにしたり、そんな1月を皆さんはどうお過ごしでしたか。続きは近いうちに。
posted by juppo at 03:12| Comment(0) | 枕草子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする