2018年01月08日

宮にはじめてまゐりたるころC

皆さん、あけましておめでとうございます。続きです!
〈本文〉
「いつの世にか、さやうに交(ま)じらひならむ」と思ふさへぞつつましき。奥寄(あうよ)りて三、四人さしつどひて、絵など見るもあめり。
 しばしありて、さき高う追ふ声すれば、「殿まゐらせたまふなり」とて、散りたる物取りやりなどするに、以下で下りなむと思へど、さだにえふとも身じろかねば、いま少し奥に引き入りて、さすがにゆかしきなめり、御几帳のほころびよりはつかに見入れたり。
 大納言殿のまゐりたまへるなりけり。御直衣(なほし)、指貫(さしぬき)の紫の色、雪に映えていみじうをかし。柱元にゐたまひて、「昨日今日、物忌(ものいみ)にはべりつれど、雪のいたく降りはべりつれば、おぼつかなさになむ」と申したまふ。「『道もなし』と思ひつるにいかで」とぞ御いらへある。うち笑ひたまひて、「『あはれと』もや御覧ずるとて」などのたまふ御有様ども、これより何事かはまさらむ。物語にいみじう口にまかせて言ひたるに、違はざめりとおぼゆ。
 宮は、白き御衣(ぞ)どもに、紅(くれなゐ)の唐綾(からあや)をぞ上に奉(たてまつ)りたる。御髪(みぐし)のかからせたまへるなど、絵にかきたるをこそ、かかる事は見しに、現(うつつ)にはまだ知らぬを、夢の心地ぞする。
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〈juppo〉描き下ろし作品として、ここまでが「高校古文もっとこういう話」に掲載されています。でも、この段はここで終わりではないんです。中途半端なままで書籍に入れる意味があったのかなぁと、今ちょっと不安になっています。せっかくなので、このままここで続きを描こうか、いつものように「続きはまたいずれ!」にしてしまうか、迷っています。

 さて、ここで突然登場した「大納言殿」は伊周(これちか)のことで、伊周は「大鏡」に登場した帥殿(そちどの)のことでした。描きながら途中で気づきました。途中まで中宮様とラブラブなのかと思ってたら、兄妹でした。
 清少納言さんからしたら雲の上の存在の兄と妹の会話が、夢でも見ている心地な場面なんですね。
 伊周の直衣とか指貫とか、中宮様の着物とか、いちいち色まで説明されててカラーでお見せできないのが残念なんですけど、そもそもカラーで描いていないので、皆さんの豊かな想像力で総天然色化してお楽しみください。

 そんなわけで、次回はこの続きになるか他の作品にするか、未定です。何にしろ、なるべく近日中に、と思っています。
 こんな調子でのスタートですが、今年もよろしくお願いします。
posted by juppo at 01:39| Comment(0) | 枕草子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月31日

宮にはじめてまゐりたるころB

年の瀬です。言うまでもなく、今年最後の更新です。
〈本文〉
昼つ方、「今日はなほまゐれ。雪に曇りて顕(あら)はにもあるまじ。」など、たびたび召せば、この局(つぼね)の主(あるじ)も、「見苦し。さのみやは籠(こも)りたらむとする。あへなきまで御前許されたるは、さおぼしめすやうこそあらめ。思ふに違(たが)ふはにくきものぞ。」と、ただいそがしに出だし立つれば、我(あれ)にもあらぬ心地すれど、まゐるぞいと苦しき。火焼屋(ひたきや)の上に降り積みたるも、めづらしうをかし。御前近くは、例の炭櫃(すびつ)に火こちたくおこして、それにはわざと人もゐず。上臈(じやうらふ)御まかなひに候ひたまひけるままに、近うゐたまへり。沈(ぢん)の御火桶(ひおけ)の梨絵したるにおはします。次の間に、長炭櫃(ながすびつ)に、隙(ひま)なくゐたる人々、唐衣(からぎぬ)こき垂れたるほどなど、馴(な)れ安らかなるを見るもいとうらやまし。御文(ふみ)取り次ぎ、立ちゐ、行き違ふさまなどの、つつましげならず、物言ひゑ笑ふ。
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〈juppo〉2017年も終わりですね。皆さんも一年の終わりにはその年を振り返ってみたりすることと思いますが、どんな一年でしたか。
私の一年は、夏バテしていたにしては全体的に健康で過ごせた一年でした。おかげさまで、当ブログが2冊目の書籍になった年でもありました。

 この「宮にはじめてまゐりたるころ」のBとCは、実はその書籍用に描き下ろしたものです。描いたのは夏バテしてたころですが、出版を待ってブログの方でも発表することにしました。

 @Aを描いたのがずいぶん前なので、どんな話だったかなぁ、という感じですよね。
宮仕えに慣れてない清少納言さんが、中宮さまのいとやんごとないきらびやかさにビビりまくり、な話でした。続きもそんな話です。
 自分の姿を見られるのが恥ずかしいほどなので、夜だけお勤めに上がりたいのに、中宮さま直々に昼から来いとのリクエストを寄せて来られて、シブシブ昼から出勤する今回の清少納言さんです。
 苦しいほど気後れして出かけているのに、火焼屋に積もった雪を「めづらしうをかし」としみじみ見る余裕があるんですね。さすがですね。

 前述の通りCまで描きおろしたので、続きも間をおかずお届けできると思います。来年までお待ちいただきますが。


 昨年出版した1冊目の方も、先ごろ重版になったそうです。「‥そうです」とヒトゴトなコメントでスミマセン。売れてるのかどうか、実際私には手応えとか実感とかないんです。でもお金を出して買ってくださった皆さんのおかげで重版に至ったのですから、手応えはなくても感謝しておりますよ。本当にありがとうございます。なんだか申し訳ないくらいに思っています。
 こんな私ですが、来年もブログ第一で頑張ります。

 皆さんにとって来る年が、嬉しい一年になりますように。
posted by juppo at 22:07| Comment(0) | 枕草子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月10日

顕雅の言ひ間違ひ

師走ですね。久しぶりに『十訓抄』から短いのをひとつ。
〈本文〉
 楊梅大納言顕雅(やまももだいなごんあきまさ)卿は、若くよりいみじき言失(げんしち)をぞし給ひける。神無月(かみなづき)のころ、ある宮ばらに参(まゐ)りて、御簾(みす)の外にて女房たちと物語りせられけるに、時雨(しぐれ)のさとしければ、供(とも)なる雑色(ざふしき)を呼びて、車の降るに、時雨さし入れよとのたまひけるを、車軸(しやじく)とかや、恐ろしやとて、御簾の内笑ひあはれけり。ある女房の、かやうなる御言ひ違(たが)への常にありと聞こゆれば、げにや、御祈りのあるぞやと言はれければ、そのために三尺の鼠(ねずみ)を作りて、供養(くやう)せむと思ひ侍ると言はれたりける、をりふし、鼠の、御簾の際(きは)を走り通りけるを見て、観音(くわんおん)に思ひまがへてのたまひけるなり。時雨さし入れよにはまさりてをかしかりけり。
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〈juppo〉「やまもも大納言」て何か可愛いなぁ、と思いませんか。これは呼び名で本名は源顕雅(みなもとのあきまさ)という方だそうです。1074年〜1136年に実在してるんですね。そういう方が、千年後の現在にまで語り継がれるのに言い間違いの多い人だった、という評判はどうかと思いますが、調べると「詩、管弦の才がなかった」と伝わってるとか、いいとこ無しの御仁だった模様です。残念です。
 
 伝わる短所が「言い間違い」というのも、ちょっと可愛いですけどね。あきる野市を「あひるの市」とかね。

 マンガの1コマ目に原文とは関係なく書いた言い間違いの例は、50代以上の人にしか分からないネタになっています。すみません。何のことやらどうしても気になる若い方は、検索してください。

 時雨と車を言い間違えたのに、宮様らは「車軸が」と受けていますが、昔は大雨のことを「車軸を流す」とか「車軸のごとし」とか言ったのだそうです。車の軸くらい太い雨が降っている様子を言い表したのですね。ただ言い間違えただけでなく、さっと降っているだけの雨なのに大雨かよ!と突っこんでいるようです。

 ネズミを見ながら話していたので、というような言い間違いも、よくありますよね。
 
 昔、居酒屋で飲んでいた時におつまみの注文を私がまとめてすることになって「焼き鳥と、揚げだし豆腐と、・・・」などと順に言っていた最後に、「・・・それと、えーと、ラスプーチン!」と自信たっぷりに言ってしまってから、店員さんのきょとんとした顔にハッとして「あ!じゃなくて!ランプータン!」と言い直したことがありました。ランプータンて珍しい果物があったので注文したんですけど、同席していた一人から「ラスプーチンて、ロシアの怪僧だろ」と指摘されたというオチでした。

 ことほど左様に、言い間違いはネタとして聞き手に面白がってもらえる幸せな欠点と言えますよね。

 今回の作品はリクエストに関係なく描きました。このところ「平家」「枕」「漢文」のループになっている気がして、ちょっと目先を変えようかと古い問題集から拾ってきました。
posted by juppo at 05:51| Comment(0) | 十訓抄 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月20日

五月ばかり、月もなうC

お待たせしました。続きです。『高校古文もっとこういう話』は本日発売です!
〈本文〉
帰るとても、なほ同じことをもろ声に誦(ず)して、左衛門(さえもん)の陣入るまで聞こゆ。
 つとめて、いととく、少納言の命婦(みようぶ)といふが、御文(おんふみ)参らせたるに、この事を啓したりければ、下(しも)なるを召して、「さることやありし。」と問はせたまへば、「知らず。何とも知らではべりしを、行成の朝臣(あそん)の取りなしたるにやはべらむ。」と申せば、「取りなすとも。」とて、うちゑませたまへり。
 たがことをも、「殿上人ほめけり。」など聞こしめすを、さ言はるる人をも、喜ばせたまふもをかし。
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〈juppo〉言い忘れていましたが、今日発売の『高校古文もっとこういう話』には、ブログに今まで掲載していない、描きおろしの作品が収録されています!言い忘れたというか、前回お知らせの記事を書いた時、描きおろしたこと自体忘れていました。いずれブログにもそのまま掲載すると思いますが、待ちきれない方は是非書籍をお求めください。以上宣伝でした。

 『五月ばかり、月もなう』は今回で終了です。結局やっぱり清少納言さんのさりげない自慢話、て感じですが、清少納言さんとしては「私のことじゃなくて中宮さまのお人柄が素晴らしいって話なのよ!」な話なんでしょうね。

 この4回目を描く段になって、昨夜のことを中宮さまは知らないの?え?中宮さま同席してなかったっけ?と、これまでの3回分を描き直さないといけないかとヒヤリとしたのですが、1回目に中宮さまのセリフがあるし、やはり中宮さまはそこにいたんですよ。でも殿上の間で清少納言さんの株が急上昇していたことは外で話していたので、中宮さまのお耳には入っていなかったのだな、と解釈しました。皆さんもそのつもりでお読みください。

 左衛門の陣はそういう名前の武官の詰所だそうです。
 中宮さまは「取りなすとも」と、その後まで言っていないんですけど、「行成どのがとりなしてくれたのだとしても、あなたの才能あってのことでしょ」というようなことを言っているわけで、その裏には竹の名前なんて知らなかったと言い張る清少納言さんの謙遜もお見通し、て意味もあるようですね。

 
 この回を描き始めた後で、突然我が家の冷蔵庫が壊れました。すぐに新しいのを買ったんですけど、入れ替えのために古い冷蔵庫の奥に眠っていた正体不明の瓶詰めやら何やらを捨てたり、冷蔵庫の通り道を確保するために掃除したり、で描きあがるのが一週間ほど伸びました。たくさん捨てたので新しい冷蔵庫の中はスッカスカです。冷凍庫なんて保冷剤しか入っていません。
posted by juppo at 05:25| Comment(0) | 枕草子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月02日

11月20日発売のお知らせ

『五月ばかり、月もなう』の完結編もお待たせしておりますが、先日来お知らせしてからお待たせし続けていた、当ブログ書籍化第二弾の続報です!
 続報というか、今度こそ本当に発売のお知らせです!!

 お待たせしました!11月20日に発売になるようです。
今回も、全国の書店に平積み・・・という運びには残念ながらなりませんが、ご興味のある方は下のリンクをポチッとしてくださいませ。

 ブログともども、どうぞよろしくお願いいたします。

posted by juppo at 17:06| Comment(6) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする